私立秀麗華美学園
「ゆーうーごーっ」


翌日昼休みになり、俺はC組へ行って窓から雄吾を呼んだ。


「なんだ、気持ち悪い」


気持ち悪いだって気持ち悪いだって。
名前呼んだだけなんですけど。


「いや、堂本……誘い出さなくちゃ……」

「ああ。待てよ」


と言いながらも、雄吾の食事のペースは両足におもりつけた亀の歩みに匹敵する。


「昼休みに誘い出せって言われただろー! 早くしろよー!」

「急いで食べると消化に悪い」


筋金入りの健康ヲタク。


「なんて誘うか考えてあんのかよ」

「当然」


あ、そ。

だからってその小さい豆をわざわざ2つに切って食うな!


じりじりとして待っている俺を尻目に、雄吾はそのままのペースで食事を続け、やっとこ両手を合わせた。


「さ、始めるか」


ため息と共に呟き、雄吾は席に座っている堂本へ近づいて行った。


「おい」


雄吾が言うとその一言さえ借金取りの声色にも似た響きが含まれている。


「え、あ、はい、僕ですか?」

「ああ。ちょっと来いよ」


自分では微笑んでいるとでも思っているのだろうか。

しかし俺にはどう見ても『勝ち誇った笑み』とかその種類にしか見えなかった。
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