私立秀麗華美学園
「はいはいなんですか!?」
「ねーねー、どっか行くつもりでしょ?」
そりゃそうだろ。部屋の中なんかで待ってられるか。ダイニングホールか食堂かロビーで雄吾が帰ってくるのを待とうと思っていたのだが、幸ちゃんの口調からして嫌な予感がした。
「和人くんいてくれないと、ゆき勝手にお部屋の中漁っちゃうかもー」
「漁っちゃうかもじゃないよやめてよ」
「あと、和人くんのお洋服着て、和人くん探しに寮の中うろついちゃうよー。いっいのっかなー」
寮間の出入りは禁止されていないので、別に問題があるわけではないが……いや問題……なくはないな……まずい事態になったり、誤解される可能性が多分に潜んでいる。というかたぶん幸ちゃんがそういう方向に持っていく。
「わかったよ……部屋にいるよ」
風呂の中からは、鼻歌が聞こえてくるだけだった。
そしてこの状態である。バスルームに背を向け、ベッドに座って頭を抱えている。
いや、別に何も困るようなことじゃないはずなんだ。ただシャワーを貸してるってだけなんだから。
幸ちゃんがあがったら、さっさと部屋から出てもらって、男子寮にいるのもなんだから咲とゆうかの部屋で待たせてもらおう。
学校に置き去りの荷物は俺が取りに行って、その後は……百合子さんたちに、連絡を取った方がいいんだろうか。百合子さんのいとこだという相部屋の子には、俺が話をするべきか。百合子さんのいとこって誰だ? 少なくともA組じゃない。っていうか、同い年? 覚えていない。それは雄吾に聞いてみよう。
とりあえずなんでもいいから、早く帰ってきてくれ、雄吾と咲。
別に何も問題はない、起こらないけど、部屋に2人っていうのは、ほら、客観的によくないし。
「はあ…………」
ブレザーだけを脱いでベッドに倒れ、顔を両腕で覆う。ズボンも結構濡れたな、シーツが濡れたら怒られる。
でもなんか、一瞬で疲れてしまった。あー、今すぐそこでシャワー浴びてるのが、ゆうかだったらいいのに。それはそれでなんかいろいろ死にそうだけど。今頃何してるんだろう。病院のベッドの上か、病院にすらもういないのか。そもそも病院になんか行ってもいないのかもしれない。最後に話したのはいつだっけ。バレンタインのデートでもらった手袋、まだ机の上に置きっぱなしだ……
「ねぇ、馬鹿なの?」
ベッドが大きく沈み込んだのを感じて腕をどけると、キャラメルブラウンの髪が、さらりと頬を撫でていった。
「ねーねー、どっか行くつもりでしょ?」
そりゃそうだろ。部屋の中なんかで待ってられるか。ダイニングホールか食堂かロビーで雄吾が帰ってくるのを待とうと思っていたのだが、幸ちゃんの口調からして嫌な予感がした。
「和人くんいてくれないと、ゆき勝手にお部屋の中漁っちゃうかもー」
「漁っちゃうかもじゃないよやめてよ」
「あと、和人くんのお洋服着て、和人くん探しに寮の中うろついちゃうよー。いっいのっかなー」
寮間の出入りは禁止されていないので、別に問題があるわけではないが……いや問題……なくはないな……まずい事態になったり、誤解される可能性が多分に潜んでいる。というかたぶん幸ちゃんがそういう方向に持っていく。
「わかったよ……部屋にいるよ」
風呂の中からは、鼻歌が聞こえてくるだけだった。
そしてこの状態である。バスルームに背を向け、ベッドに座って頭を抱えている。
いや、別に何も困るようなことじゃないはずなんだ。ただシャワーを貸してるってだけなんだから。
幸ちゃんがあがったら、さっさと部屋から出てもらって、男子寮にいるのもなんだから咲とゆうかの部屋で待たせてもらおう。
学校に置き去りの荷物は俺が取りに行って、その後は……百合子さんたちに、連絡を取った方がいいんだろうか。百合子さんのいとこだという相部屋の子には、俺が話をするべきか。百合子さんのいとこって誰だ? 少なくともA組じゃない。っていうか、同い年? 覚えていない。それは雄吾に聞いてみよう。
とりあえずなんでもいいから、早く帰ってきてくれ、雄吾と咲。
別に何も問題はない、起こらないけど、部屋に2人っていうのは、ほら、客観的によくないし。
「はあ…………」
ブレザーだけを脱いでベッドに倒れ、顔を両腕で覆う。ズボンも結構濡れたな、シーツが濡れたら怒られる。
でもなんか、一瞬で疲れてしまった。あー、今すぐそこでシャワー浴びてるのが、ゆうかだったらいいのに。それはそれでなんかいろいろ死にそうだけど。今頃何してるんだろう。病院のベッドの上か、病院にすらもういないのか。そもそも病院になんか行ってもいないのかもしれない。最後に話したのはいつだっけ。バレンタインのデートでもらった手袋、まだ机の上に置きっぱなしだ……
「ねぇ、馬鹿なの?」
ベッドが大きく沈み込んだのを感じて腕をどけると、キャラメルブラウンの髪が、さらりと頬を撫でていった。