私立秀麗華美学園
俺が寝転んだすぐ隣に乗っかってきたのは、バスタオル一枚を身体に巻き付けた、幸ちゃんだった。


「自分から寝転んで、馬鹿じゃないのー? 押し倒す手間省けちゃった」

「おしたお、は、ちょ、はあああ!? だって、シャワー、」

「出しっぱなしでそおっと出てきたけど、和人くん全然気づかないの。もしかして寝そうだった?」


驚きすぎてもつれる手足を動かして、跳ね起きようとするも、幸ちゃんに両肩を抑えられる。伸びてくる腕をのけようとしたけど、露出された肌のどこを触っていいかわからない。あっという間に組み敷かれる。


「ふふ、見下ろしたのは初めてだね」

「ちょっと、どいてよ」

「えー、やだぁ。動いたらタオル、取れちゃうかも」


手で俺の上半身を抑えた幸ちゃんは、左足の膝を俺の右足の上に乗せてきた。体重がかかって、同時にずりあがったバスタオルから白い太ももがむき出しになる。
タオルの下は本当に何も身につけていないらしい。胸元に押し込まれたタオルの端が半分とれかかっている。


「……どういうつもり?」

「んー」


ゆっくりとまばたきをする。まつげがふわりと動いて、細められた目尻が俺の方を見て緩やかに下がった。


「今日のお話は、全部ウソでした。ゆき、しめられてないよ。ご心配なく」

「……何それ。ここに来るため? ていうかこんなことしても、何の意味もないから」

「ほんとかなあ。その割に、逃げようとしてたよねぇ、和人くん」


幸ちゃんの指が伸びてきて、制服のネクタイが緩められる。細い指が片手で器用にシャツのボタンを2つ外した。
挑発に乗るのは癪だったけれど、抵抗をやめて、その代わり冷静な視線を幸ちゃんに返した。


「俺は非力だけど、幸ちゃんを力づくで押しのけるぐらいはいつでもできるよ。だけど怪我はさせたくないし、自分でどいてよ」

「和人くん、かっこいー。でもだーめ」

「何がしたいの? 今雄吾が帰ってきたとしても、変な誤解したりなんか絶対しないけど?」

「そんなの狙ってないよ。ゆきはねぇ、和人くんにもっとゆきのこと、好きになって欲しいんだぁ」


開いたシャツの胸元に指が侵入してきて、首から鎖骨にかけてをゆっくりとなぞった。背筋がぞくりとするのを気づかれないようにこらえる。


「……ならないよ」

「そうだねぇ。和人くんはゆうかちゃんが、大好きだもんねぇ」


指が肌から離れ、髪を梳き始める。


「ねーえ? ちょっとだけ、一緒に考えてみようよ」
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