私立秀麗華美学園
しかし当然のことながら、堂本は文句ひとつ言わずについて来た。
両手を体の前で重ね合わせた、慎ましさ全開の様子で。


「あのなあ……他に誘い方ねえのかよ」

「どうせ目的地に着けばわかる。いいだろ別に」


悪びれた風もなくさらりと。
それが雄吾の一番の個性なのだが。





「あ、来た来た!」


予定の場所で、咲が大きく手を振っていた。


「おー。あ、堂本、ちょっと待ってろよ」


俺の言葉には恐らく微塵の恐怖も感じられないのだろう。堂本は返事すらしやがらなかった。
喜ぶべきか、悲しむべきか。


「連れて来れたみたいね」


雄吾に『ちょっと来いよ』なんて言われりゃ誰でも着いて来るわな。いろんな意味で。


「ああ。三松は?」

「あっち」


ゆうかが指した先は用具室だった。


「……は?」

「ゆうかが引っ張って来てんけど……恥ずかしい言うて立てこもってんねん……」


まったく、世話の焼ける連中だな。


「おい! 三松!」


堂本には聞こえない程度の声で、戸の閉じた用具室に俺は声をかけた。
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