私立秀麗華美学園
清潔で明るい部屋だった。青色の絨毯の上に向かい合わせのソファーがガラステーブルをはさんでいた。奥にはホワイトボードと事務机が並んでいる。

会議室のような固い雰囲気に身体を強張らせていると、手前側のソファーに座っていた兄ちゃんが立ち上がった。
向かいには親父が座っていて、俺の顔を見るといつもみたいに相好を崩した。


「おお和人、よく来てくれた」


にこにこと笑って手招きをする。兄ちゃんが黙って親父の隣に移ったので、俺は手前のソファーに腰をおろした。

扉がノックされ、ホテルの制服を着た女性がお茶を運んでくる。彼女が部屋を出ていくと、待っていたみたいに口を開いたのは、兄ちゃんだった。


「そんなに警戒するな、一挙一動確認しやがって」


指摘されて、膝の上で両拳を握り締めた。


「……信用しろって方が無理だろ」


あまりケンカ腰にならないようにするつもりだったのを忘れ、言い放ってしまう。兄ちゃんは表情を変えない。


「話は稔から聞いたな」


やはり口を開くのは兄ちゃんだった。隣で親父は黙って深く座っている。

俺は兄ちゃんの方を見て話をした。


「……言える範囲のことは全て話してくれたって言ってた。
でも俺はわからないことだらけだ。起こったことは理解してるけど、その理由も原因も教えてもらってない。自分なりに考えもしたけど、どのぐらいあってるのかもわからない。
まずは説明して欲しい。ここ1カ月ぐらいの間のこと」

「もちろんそのつもりだ。
……初めに言っておきたいが、今回の件については俺が月城を代表することになっている。父さんは今、忙しくて今後同席できない場合もある。それだけは先に理解してもらおう」


「忙しくて同席できない」。優先順位の知れる言い方だが、とにかく話を早く進めたかったので同意した。
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