私立秀麗華美学園
「出て来いよ、もう相手来て……」

「無理よ! どうしてこうなるの!?」


ごもっともです。


「うじうじしててどうするのよ! 好きなんでしょ!?」


だから俺たちに依頼したんだろ……。


「だから勇気振り絞ってあなたたちに依頼したのに……こんなこと頼んでないわ! しかも、秘密のこと暴こうとするしっ……」


ご心中お察し致します。


同情の色を顔に浮かべる俺と対照的に、ゆうかはだんだん怒りのボルテージが上がって来ている様子。

しかも、力いっぱい握った拳を横っ腹にセットして。
……まさか、な……。


「出て来なさいよ! 怒るわよ!」

「もう怒ってるどころかキレちゃってるじゃない!」

「あーもーっ! いらつかせるわね。和人も何か言ってやってよ!」

「え……俺……?」


こんな時に気の利いたセリフのひとつでも言えたらなあ……。
と、思わないでもないが、完全に三松に同情しきっている俺が何を言っても、ゆうかの怒りを大きくするだけだろう。


「あーもう! どいつもこいつもっ」


煮え切らない俺を見てゆうかはついに構えをとった。


「ちょ……ゆうか、それは……」


血の気の引いた顔でなんとか止めようとする咲も無視。

ゆうかは2回、深く呼吸をした。
精神統一だ。


「……ぁああぁああああああっ!」


ばこっ、というか、べきっ、というかとりあえず「砕ける音」がした。
いや、砕けるってか、粉砕?

その音源、長く伸びたゆうかの足の先には、へこんで金具の外れた用具室の扉があるのだった。
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