私立秀麗華美学園
建物を出て、山道を下っていくと、麓にはバスがとまっていた。誰も乗っていない、貸し切りのバス。自家用車が苦手なゆうかのためか、運転手席と座席との間がカーテンで区切られているところを見ると、人目を
気にせず2人で話ができるようにか。
一番後ろの座席の真ん中に、2人で座る。当たり前のように俺たちだけを乗せて、バスは間もなく発車した。
――ゆうかに手を引かれて階段をおりていくと、縁側に並んだ人々による盛大な拍手で、俺たちは迎えられた。
豆鉄砲を喰らった鳩のような顔をしていたであろう俺を見て、誰もが笑う。嬉しそうに。よく見たら人が増えていた。いやさっきからいたのかもしれないけど。那美さんとか、幸ちゃんとか、あと、一番奥の方に、笠井家現当主、進の父親がいた。兄貴の雅樹を連れて。
何から尋ねればいいのかわからず呆然としていると、部屋から出てきたりえさんが前に進み出てきた。
「わけがわからないのも当然のことだわ。僭越ながら、私の方から説明をさせていただきますね。
まずは、心の底からお詫びを申し上げなければなりません」
そう言うなり、深々と頭を下げる。うっすらと涙を浮かべながら、表情は輝いていた。
「今回の誘拐の件については、全て狂言でございました。ゆうかがさらわれたこと、私たちが強権的に笠井様方の傘下に下らねばならぬということ、全てがでたらめです。
もっと言えば、私たちや月城様たちが、あなた方の仲を疑い、刺客のように幸を差し向けたという話しも、全てが真実ではございません」
えっ、と幸ちゃんの方を向くと、笑って両手でピースをしている。「刺客だってーかっこいー」とか言ってる。真実じゃない? でたらめだった?
「どっ、どっから始まってるんですか……?」
「ゆうかが学園を離れる話からです。ゆうかが実際に風邪を引いたので幸とは入れ違いになりましたが、ゆうかを引き離し、幸を近づけたのは、和人くんを試すためでした。
狂言誘拐もそうです。あなたがどのように困難を切り抜けるか、それを見定めるため――これほど多くの方々に協力していただき、実現させることができました。
と、申しますのも、一連のこと、全ては私のはかりごとでありましたので」
「りえさんの?」
ええ、とりえさんは淳三郎さんの方に視線を流す。のそのそと部屋から出てきた彼は、渋々というふうにりえさんに近づいて仁王立ちをした。
気にせず2人で話ができるようにか。
一番後ろの座席の真ん中に、2人で座る。当たり前のように俺たちだけを乗せて、バスは間もなく発車した。
――ゆうかに手を引かれて階段をおりていくと、縁側に並んだ人々による盛大な拍手で、俺たちは迎えられた。
豆鉄砲を喰らった鳩のような顔をしていたであろう俺を見て、誰もが笑う。嬉しそうに。よく見たら人が増えていた。いやさっきからいたのかもしれないけど。那美さんとか、幸ちゃんとか、あと、一番奥の方に、笠井家現当主、進の父親がいた。兄貴の雅樹を連れて。
何から尋ねればいいのかわからず呆然としていると、部屋から出てきたりえさんが前に進み出てきた。
「わけがわからないのも当然のことだわ。僭越ながら、私の方から説明をさせていただきますね。
まずは、心の底からお詫びを申し上げなければなりません」
そう言うなり、深々と頭を下げる。うっすらと涙を浮かべながら、表情は輝いていた。
「今回の誘拐の件については、全て狂言でございました。ゆうかがさらわれたこと、私たちが強権的に笠井様方の傘下に下らねばならぬということ、全てがでたらめです。
もっと言えば、私たちや月城様たちが、あなた方の仲を疑い、刺客のように幸を差し向けたという話しも、全てが真実ではございません」
えっ、と幸ちゃんの方を向くと、笑って両手でピースをしている。「刺客だってーかっこいー」とか言ってる。真実じゃない? でたらめだった?
「どっ、どっから始まってるんですか……?」
「ゆうかが学園を離れる話からです。ゆうかが実際に風邪を引いたので幸とは入れ違いになりましたが、ゆうかを引き離し、幸を近づけたのは、和人くんを試すためでした。
狂言誘拐もそうです。あなたがどのように困難を切り抜けるか、それを見定めるため――これほど多くの方々に協力していただき、実現させることができました。
と、申しますのも、一連のこと、全ては私のはかりごとでありましたので」
「りえさんの?」
ええ、とりえさんは淳三郎さんの方に視線を流す。のそのそと部屋から出てきた彼は、渋々というふうにりえさんに近づいて仁王立ちをした。