私立秀麗華美学園
「……まあ大体はそういうわけだ。最初から整理をするとだな」


面倒な役は兄ちゃんが買って出た。


「しきたりのことをゆうかちゃんは数ヶ月前から知っていた。雄吾君にも少し前に伝えてあった。
まずひとつめ、花嶺幸ちゃんがクラスメイトになること。本来ゆうかちゃんはまだクラスにいる予定だったが本当に風邪を引いてしまったためタイミングを少し早め、学園から離れることになった。

これはお察しの通り、自分に心を向けてくる女性、しかもゆうかちゃんに似ている子に、心変わりしないかどうかを確かめるもの。結果としてはなんの心配もいらないようだったな。そのように報告を受けている」

「ごめんね和人くん! ゆき全部知ってたの!」


手を振り上げてひらひらさせながら、幸ちゃんが近づいてきた。並んでみると、ゆうかとはやはり似た雰囲気があるが、髪の色と髪型が大きいのだろう。逆に似てないところはいくつでもあげることができそうだ。


「だけどね、あの時したお話はぜんぶほんとのことだよ。ゆきのイギリスでのこととか、ゆきが和人くんを好きってこととか。自分が負ってた使命をほんとはわかってたってだけ」

「だそうだ。幸ちゃんの気持ちを利用させてもらった部分はあるが、決定的に近づくチャンスでもあったわけだから、こちらもお互い様かな?

そしてふたつめ。天下の笠井にゆうかちゃんを奪われ、姫と騎士の関係解除を強制させられそうになる。
生きていれば必ず出遭う、信念と体裁を問われる局面。これには正直、これが正しいという答えは存在しないのだろうが、花嶺さんとしても、そしてついでに我々としても、不服はない。
お前のとった行動の全てが正しかったとは言えなくても、それを咎めたいとは誰も思っていないからな」

「……なんか、夢と現実がごっちゃになったみたいで、まだ混乱してる」

「まあそうだろうな。簡単に言えば超大規模などっきりみたいなもんだからな。
……あと、なー、和人への説明が終わったところで、いくつか、こっちからも聞きたい点があるんだけどなあ」


苦笑いをしながら、兄ちゃんはゆうかの方を見る。ゆうかは口に手をあてて笑っていた。


「その点につきましては、私共の方から説明させていただきたく思います」


兄ちゃんと俺たちの間に割り込んできたのはみのると真理子さんだ。


「ただ、お疲れであろうお2人のための車が麓に着いたとの連絡を受けましたので、そちらへお見送りしてからでもよろしいでしょうか」
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