私立秀麗華美学園
その後俺たちもバスに乗って、披露宴会場へと向かった。
系列のホテルで一番大きな会場がある場所だ。丸テーブルが数え切れないほど並んでいる。
俺とゆうかは雄吾や咲と同じテーブルに座った。那美さんはひとりっこでご両親にも兄弟が少なく親族席の数が合わなかったためだ。歴代の使用人達もたくさん出席してくれている。もちろん、みのるも来ていたが、会場設営の手伝いをしているらしかった。
「すっごいなあ。やっぱり規模違うなあ」
「月城の時期当主の結婚式ならな……特に宏典さんは人付き合いを大切にされる方だから、招待客が桁違いなんだろう」
「そうだよな……兄ちゃんの友人ってより親父の関係者が多いだろうな。まあ兄ちゃんに友達が少ないのもあるけど。片手で足りるんじゃねえかな」
「なあ、なんで会場からあんなに遠い式場にしたん? 確かに広くて綺麗やったけど」
「咲、知らなかったの?」
あの式場の運営責任者は白上理事長、椿先生の娘で零さんの母親であるその人だ。
交通の便が悪い代わりに美しい自然に溢れた景観で、広さも申し分なく、どのような予算や希望にも対応してもらえる式場なのだという。
知る人ぞ知るその式場は、実は学園のPAK制度で結ばれたカップルだけが使える場所だそうだ。
「えっ、でも那美さんと和哉さんは」
「お二人が出会った頃っていうと、たぶん制度そのものが無かったわね。だから本当は使えるはずじゃないんだけど……そこは零さんが噛んでるんでしょうね」
「ふーん。じゃああたしもあそこがいいなー」
「そんな簡単に決めちゃうの?」
靴ずれでもしたのかハイヒールの足元をいじりながら呟く咲に、ゆうかがおかしそうに尋ねる。
「なんとなく、顔も見たことない、喋ったこともない、いろんな先輩たちが幸せを誓い合ってきた場所って、言えるんやったらいいなあって」
「そーね。まだ例は多くなさそうだけれど」
咲の場合にはきっと、単純すぎるようにも思える「結婚=幸せ」の方程式がそのままの形であてはめられるのだ。だけど、世の中にはもっといくらでも、暗い面がある。見たくもない水面下がある。
それでも、椿先生のおっしゃったことが現実であれば。あの場所で生まれるのは幸せばかりなのだと……信じてみても、いいような気がする。
系列のホテルで一番大きな会場がある場所だ。丸テーブルが数え切れないほど並んでいる。
俺とゆうかは雄吾や咲と同じテーブルに座った。那美さんはひとりっこでご両親にも兄弟が少なく親族席の数が合わなかったためだ。歴代の使用人達もたくさん出席してくれている。もちろん、みのるも来ていたが、会場設営の手伝いをしているらしかった。
「すっごいなあ。やっぱり規模違うなあ」
「月城の時期当主の結婚式ならな……特に宏典さんは人付き合いを大切にされる方だから、招待客が桁違いなんだろう」
「そうだよな……兄ちゃんの友人ってより親父の関係者が多いだろうな。まあ兄ちゃんに友達が少ないのもあるけど。片手で足りるんじゃねえかな」
「なあ、なんで会場からあんなに遠い式場にしたん? 確かに広くて綺麗やったけど」
「咲、知らなかったの?」
あの式場の運営責任者は白上理事長、椿先生の娘で零さんの母親であるその人だ。
交通の便が悪い代わりに美しい自然に溢れた景観で、広さも申し分なく、どのような予算や希望にも対応してもらえる式場なのだという。
知る人ぞ知るその式場は、実は学園のPAK制度で結ばれたカップルだけが使える場所だそうだ。
「えっ、でも那美さんと和哉さんは」
「お二人が出会った頃っていうと、たぶん制度そのものが無かったわね。だから本当は使えるはずじゃないんだけど……そこは零さんが噛んでるんでしょうね」
「ふーん。じゃああたしもあそこがいいなー」
「そんな簡単に決めちゃうの?」
靴ずれでもしたのかハイヒールの足元をいじりながら呟く咲に、ゆうかがおかしそうに尋ねる。
「なんとなく、顔も見たことない、喋ったこともない、いろんな先輩たちが幸せを誓い合ってきた場所って、言えるんやったらいいなあって」
「そーね。まだ例は多くなさそうだけれど」
咲の場合にはきっと、単純すぎるようにも思える「結婚=幸せ」の方程式がそのままの形であてはめられるのだ。だけど、世の中にはもっといくらでも、暗い面がある。見たくもない水面下がある。
それでも、椿先生のおっしゃったことが現実であれば。あの場所で生まれるのは幸せばかりなのだと……信じてみても、いいような気がする。