私立秀麗華美学園
「で、今日じゃなかった? 依頼の受付日」


ゆうかの声に、雄吾が黒いスクールバッグからノートパソコンを取り出した。


「1件、来ていた」


雄吾の指がキーボードを叩き、メール画面が開かれた。



俺たちが、主に雄吾のパソコンから受け付けている「依頼」を説明すると、早い話が恋愛相談である。

起点は咲の思いつきだ。漫画を読んで、昔からキューピッドなるものに憧れていたという。

始まったのはいつ頃からだっただろうか。はっきり覚えてもいないが、まあなんだかそういう秘密組織的なものに憧れを抱く年頃だったんだろう。

環境が環境なだけあって、あんまり大きな声で恋愛沙汰を楽しむことはできない。
そんな制約の中で始めてみたところ、案外いろいろおもしろかったりして、今に至る。


初めは口コミで、それから立ち上げたHPで、今ではそれなりに知られた存在に。

依頼受付日は、気まぐれだ。そして依頼自体受けるかどうかさえ、気まぐれ。テスト前だと無視される確率が高いというあたりで、察して欲しい。



一応依頼料は頂きます。

まあ軽く400円。
ああそうだ400円。紛れも無く400円。このVIP揃いの学園で、400万でなく、400円。

所詮依頼料請求なんて依頼受け付けの合図っつーか、やってあげてもいいよーっていう返事っつーか。


少しばかり謝礼でももらった方が張り合いが出るかと思って考えた制度だ。
ちなみに考えたのは俺だ。
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