私立秀麗華美学園
「……だけど、わたしだって。咲を騙すのはつらかったよ。バレンタインの時はあんまり追及しないでくれて助かったけど、仮病の時とか、本当に心配してくれてたもんね」


少しだけ照れた風に、ゆうかが隣の咲に視線を流す。咲は、また泣き出しでもするかと思いきや、俺が瞬間的に思ったことをそのまま上手に言葉にした。


「……ゆうかがそういうこと、ちゃんと言葉で教えてくれんの嬉しい」

「えっ、そうなの?」

「今回ので、和人はめぇっちゃ成長したなって思ったけど、ゆうかは和人のおかげで、伝え上手になったんちゃうかなって思うよ!」


言って、最大限の笑顔になる。周りを照らすような笑顔。幸ちゃんの時といい、女の子は一瞬で大人と子供を行ったり来たりするから、驚いてしまう。


「なんでそこで和人が涙ぐむん意味わからんねんけど」

「えっ、嬉しくて……ゆうかのこともだし、咲も成長したよなあと思って……」

「めっちゃ上から目線やん腹立つわー」


やっぱり子供みたいに、咲はべーっと舌を出す。俺が笑って、ゆうかが笑って、咲が笑って、雄吾も笑う。


ゆうかとまたここに戻ってきて、4人で、笑顔で話をしている。

今の俺たちにとって、それは、何よりも幸せなことなのだった。









【Fin.】
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