私立秀麗華美学園
なんで俺ってこうなんだろうな。
ここまで運の悪い16歳は絶対希少価値あるよな。
大体、テスト中の生徒おいて出て行くほどの急用ってなんなんだよ!
完全に諦めモード。折れた芯を机からはらいのける。
ああーあ。ああーあ。これでもかとため息をつきつつ、俺はよくやるように机の端を掴んで椅子でぶらぶらし始めた。
わかるよな、今の俺の状態。
これが癖のやつがたまに派手な音を立ててすっ転ぶあれだ。
すっ転ぶことだけはないようにゆらりゆらりやっていると、机が少し動いた。
その瞬間、机の奥で、確かにコロリと何かが転がる音が聞こえた。
背筋がぞわりとなる。この音は……まさか……。
俺は机の奥に両手を突っ込んだ。
そう、ゆらりゆらりの途中でいきなり両手を突っ込んでしまった。
椅子が支えを失い、ぐらりと後ろに傾く。
「うげっ」
……この上なく静かな教室で、俺は奇声を発してしまった。
笠井がこちらを見てじろりと睨む。なんとか転ばずには済んだ。へらへらと笑いかけると、笠井はさも気分を害したようにつんと顔をそむけた。
俺はそれどころじゃなかった。両手をそっと机から引き出す。
え ん ぴ つ
だった。
鉛筆だった。鉛筆だった! 褐色の体に目に優しい緑色のコーティングを施された、麗しき筆記具だった。
テストの前には全ての荷物が別室に運ばれ、監督による机のチェックが行われるが、きっと白咲のことだからさぼったに違いない。
そしてたまたまこの机に置き去りにされた鉛筆が、俺の窮地にお出ましになったというわけだ。
ああ、やっぱりゆうかの言っていたラッキーアイテムは当たっていた。
この状況下でこの筆記具を鉛筆などと呼び捨てにできるほど、俺は高等な人間じゃない。
鉛筆様、いや、鉛筆殿あたりが妥当だろうか。
そして俺は鉛筆殿と共に仏像たちを描き、なんとか時間内に満足のいくところまで解答ができたのである。
ここまで運の悪い16歳は絶対希少価値あるよな。
大体、テスト中の生徒おいて出て行くほどの急用ってなんなんだよ!
完全に諦めモード。折れた芯を机からはらいのける。
ああーあ。ああーあ。これでもかとため息をつきつつ、俺はよくやるように机の端を掴んで椅子でぶらぶらし始めた。
わかるよな、今の俺の状態。
これが癖のやつがたまに派手な音を立ててすっ転ぶあれだ。
すっ転ぶことだけはないようにゆらりゆらりやっていると、机が少し動いた。
その瞬間、机の奥で、確かにコロリと何かが転がる音が聞こえた。
背筋がぞわりとなる。この音は……まさか……。
俺は机の奥に両手を突っ込んだ。
そう、ゆらりゆらりの途中でいきなり両手を突っ込んでしまった。
椅子が支えを失い、ぐらりと後ろに傾く。
「うげっ」
……この上なく静かな教室で、俺は奇声を発してしまった。
笠井がこちらを見てじろりと睨む。なんとか転ばずには済んだ。へらへらと笑いかけると、笠井はさも気分を害したようにつんと顔をそむけた。
俺はそれどころじゃなかった。両手をそっと机から引き出す。
え ん ぴ つ
だった。
鉛筆だった。鉛筆だった! 褐色の体に目に優しい緑色のコーティングを施された、麗しき筆記具だった。
テストの前には全ての荷物が別室に運ばれ、監督による机のチェックが行われるが、きっと白咲のことだからさぼったに違いない。
そしてたまたまこの机に置き去りにされた鉛筆が、俺の窮地にお出ましになったというわけだ。
ああ、やっぱりゆうかの言っていたラッキーアイテムは当たっていた。
この状況下でこの筆記具を鉛筆などと呼び捨てにできるほど、俺は高等な人間じゃない。
鉛筆様、いや、鉛筆殿あたりが妥当だろうか。
そして俺は鉛筆殿と共に仏像たちを描き、なんとか時間内に満足のいくところまで解答ができたのである。