私立秀麗華美学園
「なんだったのかしら。急用って」


数学の解答用紙が回収された後、ゆうかが俺のところに来て言った。

白咲のことらしい。が、今、窮地を脱し、気の抜けた俺にはどーでもいい話だった。


「何か、よっぽどの……」


ゆうかが頭を傾げて話出した時。


「おい、あれ見ろよ!」

「なんだよ……」


窓際にいた真二(俺の悪友。あの、犬みたいなやつ)に、腕を引っ張られた。
そして無理やり窓際に連れて行かれ、真二の指す方を見た。


「何なの、あれ」


ゆうかが身を乗り出して呟いた。


「他校の奴らみたいなんだ。えらい剣幕なんだよ」


俺たちが見たのは、学園の正門だった。敷地の広さのせいで、随分と遠いところにあるが。
その外側で、いかにもヤンキーみたいな格好をした奴らが、バイクをふかせて叫んでいるのだった。

そしてそれを門の内側で、白咲が必死でなだめているのが見えた。
なるほど、それでかりだされたのか。
あのような奴らに対抗できる教師は、この学園内では、他に多くいないだろう。


「何なのかしら。ねえ、行ってみよ」


ゆうかはえらく目を輝かせて俺を見た。

本来のビビりでめんどくさいこと大嫌いな俺なら、即刻首を横に振る。
が、この前のやり取りのせいか、プライドが少々高くなったらしく、首を振る方向を間違えてしまった。


「行こう行こう!」

「あ、ちょ……次、英語……」


言葉を言う間もなく、ゆうかは俺の腕をつかんで走り出した。

妙なところで好奇心をかきたてられる、奔放な姫様だ。
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