私立秀麗華美学園
靴も履きかえずに外へ出た。
めちゃめちゃ素早いゆうかの後をついていっていると、驚いたことに、数メートル先に雄吾と咲が見えた。
なぜだか2人は歩いている。


「あれ、咲と雄吾よね」

「だよなあ……」

「なんで歩いてんのかしら。しかも、雄吾が率先して向かってるように見えるんだけど」


ゆうかの言う通りだった。
先を行くのは雄吾の方で、咲はあとから小走りでついていっているだけだった。

普通に考えれば、あんな場に雄吾が関わろうとするわけがない。俺たちと同じく、咲が雄吾を引っ張っていくのならわかるのだが。


「ねっ、何してるの?」


妙な2人に走って追いついたゆうかは、非常に生き生きとした声で尋ねた。


「あ、ゆうか! ちょお聞いてよ、雄吾が変なんよー」

「この光景は尋常じゃないわね。どうしたのよ」

「あたしが正門のところ見て、行ってみいひん? って誘ってんやんか」


やはり姫たちはおかしな習性を持っていた。


「それで雄吾、窓からあれを見た途端、無言で眼鏡取り出して、もう一回見て、そしたら
いきなり教室出て、何にも言わへんままあそこ向かってんねん」

「へえ。ねえ、雄吾、どうしたのよ」


雄吾から応答はない。
ずんずんずんずんと足を進めるばかりである。そして俺たちはコンパスの差で追いつくのが困難だ。


「おい、ゆう……」

「黙れ」


雄吾の腕をつかんで声をかけると、冷たい一言を残して、雄吾は俺を振り払った。

思わず足をとめてしまうほど怖かった。あああ怖かった。いや、絶対あれは俺じゃなくたってびっくりするって、うん。
そしてそんな俺を誰も振り返らず、俺たちは現場へ向かった。
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