私立秀麗華美学園
それから俺は2日間、悶々として時を過ごした。

授業なんぞは耳に入らない。新学年初めてのテストなので今回は5教科のみで、本来ならばこのあとが勝負だというのに。本末転倒である。


ちなみに咲は、めちゃめちゃ出来がよかったらしい。
普段のそれに輪をかけたテンションの高さで、挙動不審と言われても仕方ないんじゃないかというありさま。

羨ましいっちゃ羨ましいが、あそこまでうかれるのもどうかと思ってしまった。



そして結果発表の日。


「行くよっ!」


あんなことを言っていたわりにゆうかはやけに意気込んでいる。ちょっと嬉しかった。

廊下はざわめく生徒たちで溢れ返っていた。
成績上位者の載った張り紙の前は黒山の人だかりだ。


「見えねーけどなあ……」

「雄吾なら見えるんちゃう?」


いや、背の高さとかそういう問題じゃないんですが。まあ、小さめだということに変わりはないですけども。


「もっと突っ込んで近づこうや。和人の運命かかってんねんで!」


その割にはとっても楽しそうな咲は、ひるむことなく人だかりに突進していった。
俺たちの中では最もミニマムな咲があの中に飛び込んだところで、暑苦しい思いをするだけに違いないのだが。


「もう、咲ったら……」

「やあ、皆さん、おそろいで」


やあ、その掛け声ひとつで声の主は特定されるであろう。

振り返れば、したり顔の笠井のおでましだ。
雄吾は笠井を一瞥すると言った。


「お前が笠井、か。見た顔だ」

「そちらは鳥居君とかいう、C組のすかした男子生徒だね」


雄吾の顔色が変わったことは言うまでもない。
握りしめた右手の拳に、青筋が現れたのが見えた。

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