私立秀麗華美学園
「さすが、よくご存知で。妙な言葉遣いのA組の殿下は」


ゆうかがぶはっと吹き出した。
妙な言葉遣いの殿下。雄吾が言うからこそ皮肉の度合いは増し、要するに、いい気味だ。

笠井は不快極まりないといった表情で雄吾をひとしきり睨みつけると、気を取り直すように咳払いをして言った。


「さあ、ところで月城くん。この前の勝負の行方が明らかになったようだね」

「始める前からわかってたけどね」

「そりゃないだろゆうか……」

「さすが花嶺さん。察しの悪い下衆共とは違うね」


前髪をさらっとかきあげた君、黙ってみてはどうですか。


「で、どのくらいの差だったのかしら」

「ふっ、差なんてものじゃないよ。月城くんの名前が上位者一覧になんて、掲載されれるわけがないじゃないか。探そうとも思わなかったよ。まあ、僕は当然27位以内に入っていたけどね」


言い終えると笠井は、ひらりとゆうかに向かってお辞儀をしてから、教室の方へ歩いて行った。お辞儀が綺麗すぎて正直滑稽だった。


「……27位だったんだな、殿下は」

「27位以内ってまさかの使い方だよな」

「っていうか、そんな程度だったのね」


ゆうかさん、ぼそっとそれは酷くねえ? 仮にも好きな人じゃなかったっけ。


「和人ー! ゆうかー! 雄吾ー!」


振り向くと、咲が群衆の中から興奮気味に叫び声を上げていた。


「ちょお来てみて!」

「行けないから困ってるんじゃない! 見えた? 和人、何位だったの?」

「え、それは知らんけど」


んじゃお前何しに行ったんだ。

咲はぷはっと大きく息をはきだして、人ごみの中から抜け出した。

< 94 / 603 >

この作品をシェア

pagetop