俺のボディガードは陰陽師。


「…で、うさん臭いヤローのおまえが、伶士の彼女を横取りしたワケ」

「横取り?…ははっ!そんな物騒なこと言わないでよ?そのパーティーでたまたま会って、向こうから来ただけ。で、俺はその相手をしただけ」

「ふーん。弟の彼女をNTRしたワケだ…」

「だから、寝取ったとかやめてよ?ちょっと付き合った」




…俺は、すごく大切にしていたのに。

なのに、格上というだけで軽々と兄貴に取られてしまう。

一生懸命大切にしていたものを、軽く扱われてしまう。



これが格差というやつで。

兄貴には絶対に敵わない。



何もかも、絶対に敵わないんだ…!



この過去を思い出される度に、惨めな思いをさせられて。

その度に、胸の奥を抉られて激しく痛む。

そして、その傷口から、真っ黒い感情が蠢きだす。


彼女への想いは、とうにふっきれていても。

この劣等感だけは、今でもずっと残っていて。



痛い。痛いんだ…。








「…おまえ、最っ低だな?」




鈴代なずなの低い声が、静かに響いていた。




「え…」

「弟が夜のパーティーにも行かせたくないくらい大切にしている彼女を横取りした。ってことだろ。このけーはくナンパヤロー」

「軽薄軟派ヤローって…」


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