俺のボディガードは陰陽師。
「い、いや…それ」
「ん?」
倒れている兄貴を恐る恐る指差す。
最初は首を傾げていた鈴代だが、そのうち「…あ」と、ハッとした顔を見せて、みるみるうちに青ざめていった。
「…あ。ああぁぁっ!そうだ、こいつは仮にも橘の人間だった!けーはくナンパヤローでもうさん臭いペテン師ヤローでも、橘の人間だったぁっ!…ああぁぁっ!」
仮ではない。
橘の人間ど真ん中だぞ。
ようやく事の重大さに気付いたのか、青ざめた顔のまま一人でお祭りのように慌てふためく。
「あ、あぁっ、あーっ!どうしよ!」
そして、「ああぁぁ…」と、肩を落としてずーんと落ち込む。
減俸の恐怖か。
やれやれ。
腹の底から長いため息が出た。
横たわって呻いている兄貴を見て。
橘の人間に失礼どころか暴力を奮ってボッコボコにしてしまったが。
これは、完全に兄貴の非だろ。
酔っ払い相手であしらうもクソもない。
抵抗しなかったら、間違いなく過ちが起きる。
「あ、あの…伶士、お坊っちゃま?」