俺のボディガードは陰陽師。


…でも、これだけはわかる。




カウンターにつっ伏して、肩を震わせる女性。



《…あなたを諦めるなんて、出来ないよ…》



泣いてる…?



悲しい。

辛い。

千切れそうで…苦しい。




何で?何でなの?

どうして、こんな終わり方…!




これは、喪失感の悲しみなのか。

横奪への怒りなのか。

独りになった心寂しさなのか。



わからない。

わからないけど…。




それは、切なくて。




(…悲しい…)




自分のことではない。

絶対に、俺自身のことではないはずなのに。

だけど、なぜかそれを悲しいと思えてしまった。



経緯はわからないのに。

でも、その悲しみだけが自分のものになったような気がして。

意識が囚われて、それだけしか考えられなくなった。



悲しい。辛い。苦しい。



涙が一筋、頬を伝う。



《愛しているのに…》



愛しているのに。

何で、大切にしたいと思ったら取り上げられるの?



何で…。




《…何で、私から奪うの?》

「…何で、私から奪うの?」




「伶士?…ちっ、おまええぇぇっ!」


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