俺のボディガードは陰陽師。
「涙…止まらないのか?」
落ち着いた声で、静かに問われる。
「………」
だが、胸が詰まって。
返答出来ずに、俯くしか出来なかった。
喪失感と絶望感が、ただ胸の中に残って。
それが、体から離れてくれない。
その感覚に無理矢理押し出されるように、抑えきれず言葉を口にしてしまった。
「すごく…大切にしていたのにっ…」
…それは、今まで腹の中に溜めていた真っ黒い感情だった。
「…でも、兄貴や親父には敵わないんだっ…」
こんなカッコ悪い泣き言、一生口にするつもりはなかったのに。
死ぬまで、胸の中に留めておくつもりだったのに。
「…俺がっ…俺が兄貴みたいに優秀じゃないからっ…出来が悪いからっ…」
でも、止まらない。
感情を吐き出すのも。
涙も。
「伶士、落ち着け」
「うっ…うぅっ…」
「その悲しみは伶士のものじゃない。さっきの夜這い女がおまえを自分の精神世界に引きずりこもうとして、その感情に触れただけだ」
「ちっ、違うっ…」
「違わない。大丈夫だ」