俺のボディガードは陰陽師。


『えっ、宮内さん…!』



後ろにいた仲間内の女子の一人が思わず声をあげる。

俺の心情の代弁をするかのように。



兄貴の隣には、寄り添うように近くに立っている、よそ行きに着飾った。

薫の姿だった。



薫…兄貴と?

何で一緒に…?



『…おっ?伶士じゃない。今日は何?幼稚園メンバーとのディナー?』



固まって立ち尽くしている俺達に気付いたのか、ルームキーを手にした兄貴がご機嫌な様子でこっちにやってくる。

薫も兄貴の後ろをしずしずと着いて歩いてやってくる。

俺の姿を見ても、顔色をひとつ変えずに。



『頼智さん、お久しぶりです…!』と、周りの奴らは兄貴に慌てて頭を下げている。

しかし、その空気は何故かなんとも気まずいものだった。



何で…何がどうなってるんだ?

何でこの二人が…!



思わぬ現実に、全身の血の気がサーッと冷めていく。

身動きはおろか、言葉のひとつも出ない。

そんな青ざめている俺とは対称的に、兄貴は余裕たっぷりで笑顔すら見せていた。



『…お、そうだ伶士。今日は家に帰らないから。じゃ!』



それだけ言い残して、兄貴は俺達の前を去った。

薫を連れて。



< 268 / 504 >

この作品をシェア

pagetop