俺のボディガードは陰陽師。
「昨日のあなた方の話を廊下でこっそりと聞いてしまいました。ごめんなさい…でも、まさか伶士を襲った悪霊が倫子さんで、もうお亡くなりになっていただなんて…」
「…鹿畑さんの存在も、社長との関係もご存知だったのですか」
「ええ…二人の関係は、婚約中から気付いてはいました…あの時の主人は、この婚約に不満があったのをわかってましたし…」
婚約中から、気付いてた…?
政略結婚とはいえ、自分との婚約中にも関わらず、親父に他に女がいたってわかってたのに、結婚したの…?
掻い摘んだだけの話じゃ、わからない。
…だけど、まさかここから。
悲恋のエピソードの詳細が明かされることになるとは思わず。
一方、なずなは先ほどいた辺りの位置まで戻り、また偉そうに腰に手を当てて立っている。
苦しみもがく、鹿畑倫子さんの姿を黙って見上げていた。
「………」
一度、軽く深呼吸している。
そして目を閉じ、手を合わせて合掌している。
「…天の声 地の恵み 祝詞 御加護があらんことを 喜び 奉らん…」
それは、まるで祈りを捧げているようで…。