俺のボディガードは陰陽師。
そこには、鈴代なずなが俺らを背に庇い、あの大きなバケモノの手と対峙する。
バケモノの手と鈴代なずなの間には、衝立のように、ピンク色をした透けたガラスのようなものがあって。
そのピンクのガラスには、大きな円や異国の文字みたいなものが何重にも描かれている。
まるで、ファンタジー漫画に出てくるような…魔法陣みたいな。
「…ふんぬっ!」
鈴代はそのピンクのガラス、魔法陣を両手でグッとバケモノの手に向かって押し付ける。
パチパチとショート音を鳴らしながら。
しかし、バケモノの手も負けじと手の甲でその魔法陣を押し返す。
ガラスの押し合いとなっていた。
まるで、筋肉勝負番組の一種目のように。
そして、鈴代が今一度「ふんっ!」と、魔法陣のガラスを強く押す。
「…ナウマク・サンマンダ・ボダナン…マカ・ナーラ・ア・ビラ・ウンケン・ソワカ…」
鈴代がそう呟くと、途端にピンクのガラスは更にピンクの光を強く発する。
ガラスはグッとバケモノの手を挟んで、一気に勢いをつけて押し進む。
教卓の前で爆発音を鳴らした。
「ふぅ…」
俺に見せるその背中は、肩が上下に動いている。
急いで…来てくれたのか?
「鈴代っ…」
「待たせたな?…伶士」
その細い背中は、安心感を与えてくれて。
何だか、頼もしささえ感じた。
悪そうに笑う、口元を覗かせて。