俺のボディガードは陰陽師。
「陰陽五行…『戒糸』」
その場から、糸の絡む両手をバケモノの手に向かってぶんっと振り下ろす。
瞬時に、その黄金色の糸はバケモノの手二つを包み込むように絡まって、あっという間に締め上げる。
まるで、ワイヤーロック…!
《あああぁぁぁっ!…あああぁぁぁっ!…》
バケモノの手が、叫んでいる。
キリキリとした、高い声で。
鈴代はそのワイヤーロックを拳を握って引き上げる。
重量があるのか、腕がプルプルいってる。
「…これで動けねえよ?…バケモノ」
締め上げられたバケモノの手は汚い悲鳴をあげながら、そのワイヤーから逃れようともがいているのがわかる。
そして、少しずつ鈴代によってワイヤーごと引っ張られ移動させられていた。
そのまま鈴代はまたブツブツと呪文を唱えていた。
同時に、バケモノの叫び声も被って聞こえる。
《…あああぁぁぁっ!…許さない愛してる許さない愛してる許さない愛してる…あああぁぁぁっ!…》
「…ナウマク・サンマンダ・ボダナン…ア・ビラ・ウンケン・ソワカ!」
そう言って、鈴代は「ふんっ!」とそのワイヤーを一気にグイッと引き上げる。
パチパチと音を鳴らし始めたワイヤーを振り回して、バケモノの手ごと黒板に向かって放り投げた。
黒板の真ん中にある、渦巻く黒い靄に向かって。