私のアオハル(理想)はそうじゃない
瞬時に意味を理解出来なかった綾瀬は、聞き返す。

「愛美ちゃん、双子?」
「お姉ちゃんは1個上、この学校の2年生やで」
「…てことは?」
「留年やね」

思わぬ秘密を聞いてしまった綾瀬は、でも気にする素振りは少なくともクラスでは無かったような、と思い返してみる。

「てか本人に聞いたら?普通に」

そう言葉を投げかけられ、「出来るわけない」と返す。
そんなディープな内容、ただのクラスメイトである
自分が聞いていいわけがない、と。

「まあそっかあ、そうやんなあ」と同情の視線を向けられ、「まあ留年とかどうでもいいけど。かっこいいし」とあっけらかんと答えると、「へえ」と感心される。

事実、こういう所は綾瀬の長所であった。
両親が共に聴覚障害者な為、障害の有無で人を差別しないし、ちびっ子でも大人でも喧嘩していたらまず双方の話を聞く。そこから客観的に判断する所や、嫌いな相手でも良い所を探そうとすること、極力嫌いに持っていかずに苦手で留めようとする所など、本人は分かってなかったが、周りの人達によく言われている言葉だった。「そこが綾瀬の良い所やんな」と。
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