松姫様からの贈り物
私は菊ちゃんから庭で月を眺めながらこの時代での結婚の意味について聞いていた。
「この戦乱の世での結婚とは、国と国の絆を結ぶという意味があるのです。」
国と国の絆……?
「実は姉上の婚約が決まる前、武田の四郎兄様と織田の遠山姫様が結婚していたのです。もちろん、同盟の証として」
四郎兄様とは、今は勝頼と名乗っている方ですが。と付け足してくれた。
「四郎兄様と遠山姫様との間に子供が産まれたのですが、その数日後に遠山姫様が亡くなってしまったのです。その後で信忠様と姉上との婚約が決まったのですよ。それが5年程前の話で。信忠様と姉上は婚約が決まってからずっと文のやり取りをしていたのです。」