音楽が呼ぶ奇跡
震える体を抱きしめながら、お父さんに言う。

「……お父さん、お母さんや皆をここに連れてきてくれませんか?」

やった。言えた。

「あ、あぁ。分かった」

なんて言ったのかは分からないが、お父さんの行動と頷き方で了承してくれたのが分かった。

なんで、耳が聞こえないんだろう。私には、この耳と音楽しかないのに……

「待たせたな」

お父さんが連れてきた人は、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃんだった。私は、三人兄弟の1番下の末っ子。次女になる。

勇気を持って声を出す。

「お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん、聞いてくれますか?私は………倉敷神楽〈クラシキ カグラ〉は、耳が聞こえなくなりました」

涙目になりながら言うと、お母さんがため息をついて私の襟を掴んだ。

「はぁ、貴方って子は、一体何の冗談を言っているのかしか?貴方には、楽器を奏でる力とその耳しかないって言うのに………」

何を言っているのか分からない。音が耳を通さない。けど、お母さんの顔を見れば何となく分かる。怒っているんだ。そして、そして、私は……ここから出ていかないといけないんだ。だから、自分から言うんだ
< 4 / 8 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop