曇天の光
政宗は個室から出て、席へと戻る。「先輩、もつ煮込み来ちゃいましたよ〜」と幸村が言った。

「おお、うまそうだな」

「ここの人気メニューらしいです」

目の前で笑っている幸村は、特殊警察の裏の顔を知らない。

必ず真実を明らかにする、そう心の中で呟きながら政宗は日本酒を飲み干した。



数日後、政宗はいつも通り仕事をしていた。事件の捜査状況を報告し、容疑者を絞り出していく。

「……よし、ちゃんとあるな」

聞き込みを終え、本部に戻る際に政宗は胸ポケットにそっと触れた。硬いものがポケットの中にある。

「もし僕に何かあった時は、あなたが世間に全て話して」

そう言われ、半兵衛から証拠を集めたデータを受け取っていたのだ。その数は膨大なもので、半兵衛の力に政宗は圧倒される。特殊警察に入っていれば、一瞬にして組織のトップに立てるだろう。

政宗は気を引き締め、自分のデスクへと戻る。不正まみれのこの職場に鉄槌が下る日は近い。
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