曇天の光
その日の夕方、政宗の家を幸村が訪ねてきた。その顔はどこか暗く、いつもとは違う。

「わかった。支度をする」

部屋着として着ている着物から外行きに素早く着替え、政宗は幸村と共に普段よく行く居酒屋へと向かった。

背後に意識を集中すれば、誰かが後をつけてきているのがわかる。政宗は駆け出したいのを懸命に堪えた。

「先輩、お忙しいのにすみません。せっかくの休日なのに……」

「いや、どうせ本を一日中読んでいるだけだからな。後輩の悩みの方が大事だ」

居酒屋に入り、料理やお酒を注文すると幸村が頭を下げた。政宗は微笑み、水を飲む。休日は家にいることがほとんどなので、こんな日も悪くない。

「先輩、恋人がいるかもしれないって思ったんですけど……」

「恋人?いやいや、そんな人はいない」

「えっ?でも、前にすごく噂になってましたよ。赤い着物の美人と歩いてたって」

「ああ……。それは、俺の妹だな」

「えっ!?今度紹介してください!!」

「断る」
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