僕が殺されるまで…
いつも教室の隅でボーッと窓の外を見ている男の子が居る。正確には居たが正解だ。もう座ることのない彼の机の上には、菊の花が入った花瓶が置かれている。虐めではない。彼は死んだのだ。1ヵ月前に殺された。
クラスの輪にあまり入らなかった彼は、すぐにみんなから忘れられた。花の世話をするのも麻央だけになった。クラスで唯一、彼と多く過ごした麻央だけ。
これは、彼が殺されるまでの49日間の話。
五時限目。歴史の授業。ただでさえ眠たくなる授業なのに、お昼を食べた後とは…。麻央はあくびを堪えながら、のんびりと話す先生の話を聞いていた。
「麻央。はい、これ」
すぐ後ろの席に座っている桜が、小声で麻央に1枚の紙を渡してきた。
「何これ?」
小さく折り畳まれた紙。開いて見ると、クラスでカッコイイ男子のアンケートだった。
「それ、書いて、次に回してね。絶対に男子には見せないでね!」
「分かった…」
そろそろ眠気に負けそうだったので、アンケートに答えることにした。
倉田透。運動神経が良く、誰にでも優しい男子。今のところ、アンケートでは彼の票が1番多い。
(だろうなぁ。倉田君、モテるもんなぁ。 私は別に好きじゃないけど)
どの女子も倉田の名前ばかり書いていた。麻央は特に倉田が好きではないので、他にカッコイイ男子の名前を書くことにした。
(倉田君以外だと…沢城君かな?)
沢城未来。いつも教室の隅でボーッと窓の外ばかり見ている男子。口数が少なく、性格も暗いため、男子からも女子からもあまり人気がない。桜曰く、彼氏にしたくない男NO.1だそうだ。
(よく見たら綺麗な顔してるのになぁ…)
前髪で顔がよく見えないが、彼は綺麗な顔をしている。前に一度、落としたプリントを拾ってもらった時に見えた。ぱっちりとした目元、鼻筋も通っている。
(女の子みたいで可愛いのに。勿体ない)
髪を整えたら、倉田よりもモテるだろう。あとはコミ力をもう少し上げれば完璧だ。
(あ、でもカッコイイ男子だっけ。沢城君は可愛い系だから…ま、いっか)
沢城未来。麻央はクラスで1人だけ沢城未来の名前を書いた。
「ねえ、麻央は誰の名前書いた?」
放課後になり、さっさと帰ろうとしていた麻央に桜が声をかけた。
「名前?」
「さっきのアンケートだよ!」
すっかり忘れていた。結局、紙を渡した後はぐっすり眠ってしまって、その前の記憶がほとんどない。
「やっぱり倉田君?」
どうしようか。ここで沢城の名前を出せば、面倒なことになりそうだ。今日は、早く帰りたい用事があるのだ。
「…うん」
「だよねー!私も倉田君。誰か沢城君の名前書いててさ、ありえないよね?」
チラリと桜が沢城の席の方を見る。同じように、麻央も沢城の方を見ると、やはり沢城は窓の外をボーッと見ていた。
「何考えているか全然分かんないし、暗いし、ボソボソ喋ってるし。どこがいいんだろうね?」
「さあ?」
顔が良いんだよ、なんて言えない。
「私、用事あるからさ、帰るね」
「うん!また明日ー」
クラスの輪にあまり入らなかった彼は、すぐにみんなから忘れられた。花の世話をするのも麻央だけになった。クラスで唯一、彼と多く過ごした麻央だけ。
これは、彼が殺されるまでの49日間の話。
五時限目。歴史の授業。ただでさえ眠たくなる授業なのに、お昼を食べた後とは…。麻央はあくびを堪えながら、のんびりと話す先生の話を聞いていた。
「麻央。はい、これ」
すぐ後ろの席に座っている桜が、小声で麻央に1枚の紙を渡してきた。
「何これ?」
小さく折り畳まれた紙。開いて見ると、クラスでカッコイイ男子のアンケートだった。
「それ、書いて、次に回してね。絶対に男子には見せないでね!」
「分かった…」
そろそろ眠気に負けそうだったので、アンケートに答えることにした。
倉田透。運動神経が良く、誰にでも優しい男子。今のところ、アンケートでは彼の票が1番多い。
(だろうなぁ。倉田君、モテるもんなぁ。 私は別に好きじゃないけど)
どの女子も倉田の名前ばかり書いていた。麻央は特に倉田が好きではないので、他にカッコイイ男子の名前を書くことにした。
(倉田君以外だと…沢城君かな?)
沢城未来。いつも教室の隅でボーッと窓の外ばかり見ている男子。口数が少なく、性格も暗いため、男子からも女子からもあまり人気がない。桜曰く、彼氏にしたくない男NO.1だそうだ。
(よく見たら綺麗な顔してるのになぁ…)
前髪で顔がよく見えないが、彼は綺麗な顔をしている。前に一度、落としたプリントを拾ってもらった時に見えた。ぱっちりとした目元、鼻筋も通っている。
(女の子みたいで可愛いのに。勿体ない)
髪を整えたら、倉田よりもモテるだろう。あとはコミ力をもう少し上げれば完璧だ。
(あ、でもカッコイイ男子だっけ。沢城君は可愛い系だから…ま、いっか)
沢城未来。麻央はクラスで1人だけ沢城未来の名前を書いた。
「ねえ、麻央は誰の名前書いた?」
放課後になり、さっさと帰ろうとしていた麻央に桜が声をかけた。
「名前?」
「さっきのアンケートだよ!」
すっかり忘れていた。結局、紙を渡した後はぐっすり眠ってしまって、その前の記憶がほとんどない。
「やっぱり倉田君?」
どうしようか。ここで沢城の名前を出せば、面倒なことになりそうだ。今日は、早く帰りたい用事があるのだ。
「…うん」
「だよねー!私も倉田君。誰か沢城君の名前書いててさ、ありえないよね?」
チラリと桜が沢城の席の方を見る。同じように、麻央も沢城の方を見ると、やはり沢城は窓の外をボーッと見ていた。
「何考えているか全然分かんないし、暗いし、ボソボソ喋ってるし。どこがいいんだろうね?」
「さあ?」
顔が良いんだよ、なんて言えない。
「私、用事あるからさ、帰るね」
「うん!また明日ー」