弥生花音 童話集 1
不思議な声
むかしむかし、あるところに少しはずかしがりやの女の子、あいちゃんがいました。1ねんせいになって1かげつ、ひとりもなかのよいおともだちができていませんでした。

ある日、あいちゃんは、高いねつを出してしまいました。おいしゃさんにみてもらっても、ぜんぜんよくなりません。

ねつがつづいて学校を休んだ3日目の午後、しんぱいしたクラスの子たちが、野に咲く花をつんでもってきてくれました。

「ありが・・・とう」

そう言うのがやっとのあいちゃんでした。

その日の夜、こんなゆめをみました。花束をもってきてくれた子たちと楽しそうに話すゆめ。

(どうしたら、あんなふうにお話しできるの?)

目をさましたあいちゃんは思いました。

「ともだちをつくるには、えがおがいちばん!えがおでおはようって言ってごらん」

「だれ?だれの声?この部屋にはあいちゃんしかいないのに」

あいちゃんはびっくりです。

「ボクたちだよ」

こんどははっきりときこえます。花びんの中の花たちです。

「ゆうきを出して、ねっ。ボクたちをくれた子たちに話しかけてごらん」

あいちゃんは、クレヨンをだして、花たちをがようしにえがきました。そして、

「パパ、ママ、今日は学校に行けるよ!」

元気に朝ごはんを食べて学校に行きました。

(えっと・・・ともだちをつくるには、えがおがいちばん)

「ガンバッテ、ガンバッテ!」

「あいちゃんならだいじょうぶ!」

道のはしにうえられている木や花たちがおうえんしてくれます。

「みんなもあいちゃんとおともだちになりたいっておもってるよ」

目の前に広がる草原もささやきます。

「みんな、ありがとう!!」

学校について、クラスの前でしんこきゅう。1、2、3。あいちゃんはがらっととびらを開けてえがおで言いました。

「おはよう、みんな!!」

「あいちゃん、げんきになったんだ!」

「おはよう!!」

みんながえがおでかえしてくれます。

「あのね、みんながくれたお花を絵にしたの」

「わぁ・・・あいちゃんって、絵が上手なんだね。やすみじかんに一緒にお絵かきしようよ」

「うんうん」

あいちゃんは、とてもうれしくなりました。

(あいちゃん、よかったね。そのちょうしでなかよくね)

校ていの木や花たちが声をかけてくれます。

(ありがとう。お花さんも木さんも、これからも友だちでいてくれる?)

(もちろん、ボクたちはいつもキミの友だちだよ)

あいちゃんと、クラスのお友だちは、それからどんどんなかよくなっていきました。



おしまい。
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