弥生花音 童話集 1
ぶどうをとどけに
むかしむかし、ある小さな町に小学校3年生のゆいちゃんという女の子が住んでいました。
ある日、ゆいちゃんのお母さんが、おとなりさんからたくさんのみずみずしいぶどうをもらってきました。
「おいしそうなぶどうね。でも、こんなにどうするの?」ゆいちゃんはたずねます。
「そうねぇ。となり町のおばあちゃんのところにとどけようとおもうんだけど、ママ、今日はちょっといそがしくて」
「じゃあ、ゆいが行ってあげる。おばあちゃんちは、バス停からすぐでしょう?」
「わかったわ。じゃあお願いするね。おだちんに500円あげる。おかしでも買いなさい」
「わぁい、ありがとう」
「おばあちゃんの家についたら、でんわするのよ」
「わかった。じゃあ、行ってくるね」
おばあちゃんの家は、森を抜けてすぐのところです。ゆいちゃんは、たくさんの木々の中をとおるその道が大好きでした。
ゆいちゃんが、バス停でバスを待っていると、バスがやって来ました。
ゆいちゃんがバスのうんてんしゅさんに聞きます。
「あさひがおかには行きますか?」
「行くよ。えらいねぇ。ひとりでおつかい?」
「うん、おばあちゃんちにぶどうをとどけにくの」
「そうかい。じゃあ、あんぜんうんてんでいくよ」
バスがうごきだします。なんにんかの人がのりこんできます。
そうしているうちに、バスは森の中の道に入って行きました。
ワクワクしながら、外を見ていると、道ばたに茶色い小さなまんまるとしたものをみつけました。うごいてはいません。
(へんね。うさぎさんみたいだけど・・・。もしかして、けがをしているのかも)
ゆいちゃんは、ブザーをならします。
「おります、おりまぁす!!」ゆいちゃんは、ひっしでさけびます。
「あさひがおかまでいくんじゃなかったのかい?まだ、ずいぶんあるよ」バスのうんてんしゅさんは、ふしぎそうです。
「あの・・・そのぉ。お花をつんでいきたくなって。ここからだったら、なんとかあるけるので」
「わかった。けっこう、車がとおるから、きをつけてね」
ゆいちゃんは、バスをおりると、もと来た道をかけだします。
(うさぎさん、うさぎさん、どうかぶじでいて)
しばらくして、うずくまっているうさぎさんのところにたどりつきました。
うさぎさんは、あしから血をながしています。
息はまだあるようです。
「いたそうね・・・」
ゆいちゃんは、ハンカチを取り出すと、うさぎさんの足にまいてあげました。
(たしか、おばあちゃんの家に行く途中に、動物びょういんがあったはず。)
ゆいちゃんは、うさぎさんをだっこすると、あるきはじめました。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「えっ。まだついていないんですか?」
ゆいちゃんからのれんらくがないのをしんぱいしたゆいちゃんのママが、おばあちゃんにでんわしておどろきました。
「ええ、まだよ。バス停までむかえにいこうかしら」
「行きちがいになるとこまるから、そこにいてください。わたしが、そちらにいきます」
「そうね・・・なにがあったのかしら」
ゆいちゃんのママもおばあちゃんもしんぱいそうです。
ゆいちゃんのママは、家事をほっぽりだして、バス停へむかいました。
おばあちゃんの家についても、やっぱりゆいちゃんはまだついていなくて、ますます心配になります。
(いったいなにがあったのかしら。まさか、さらわれたとか)
悪いほうへ、悪いほうへ、考えが行ってしまいます。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
そのころ、ゆいちゃんは、やっと動物びょういんに近づいてきたところでした。
「がんばって。もう少しだからね」
ゆいちゃんは、うさぎさんにかたりかけます。
(あともう少し)
ゆいちゃんは、足がいたいのをがまんしながら歩きます。
「ついたぁ。」
ゆいちゃんは、動物びょういんのドアを開け、受付のお姉さんに言います。
「この子をたすけて」
お姉さんは、きずを見て、先生をよびます。
「先生、急いでください」
やさしそうな、30さいくらいの先生がしんさつしつから出てきます。
「これは・・・骨がおれているね。すぐにちりょうだ」
「あの…お金がこれしかないんです」
ゆいちゃんは、不安そうに500円玉を見せます。
「それでじゅうぶんだよ」先生はえがおでいいます。
すぐに、うさぎさんは、しんさつしつに入って行きます。
(そうだ、ママとおばあちゃんがしんぱいしてる。おばあちゃんに電話しなきゃ)
「すみません、電話をかしてください」
ゆいちゃんは、おばあちゃんの家に電話をすると、いままでのいきさつを話しました。
すぐに、ゆいちゃんのママとおばあちゃんがとんできました。
「ゆい、心配させないでよ・・・」
ゆいちゃんのママがゆいちゃんをだきしめます。
「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
「でも、うさぎさんを助けたのはえらいね。ママはゆいをほこりにおもうよ」
ゆいちゃんは、ちょっとはずかしそうです。
しばらくして、しんさつしつのとびらがひらきました。
「1かげつほどしたら、また、つれてきてください。どうなっているか、見ます」
「あの、ちりょうのお金は・・・」ゆいちゃんのママがおさいふをだそうとします。
「もう、いただきました。ねっ!」せんせいは、ゆいちゃんにウィンク。
「でも、それだけじゃあ・・・」
「いいんですよ。ゆいちゃんの、やさしさがこの子の命をすくったんです」
「ねぇ、ママ」ゆいちゃんが言います。「先生に、ぶどう1ふさ、あげない?おばあちゃんの分が2ふさになっちゃうけど」
「わたしは、かまわないよ」ゆいちゃんのおばあちゃんもいいます。
「じゃあ、先生、これを。とても甘くておいしいと、うわさになるほどのぶどうなんです」
「ありがとう。いただくよ。」
ゆいちゃんたち3人が、うさぎさんをつれて動物びょういんを出ます。「ゆい、この子を大切にする」
それからずっと、ゆいちゃんとうさぎさんは、なかよしのともだちになりました。
おしまい。
ある日、ゆいちゃんのお母さんが、おとなりさんからたくさんのみずみずしいぶどうをもらってきました。
「おいしそうなぶどうね。でも、こんなにどうするの?」ゆいちゃんはたずねます。
「そうねぇ。となり町のおばあちゃんのところにとどけようとおもうんだけど、ママ、今日はちょっといそがしくて」
「じゃあ、ゆいが行ってあげる。おばあちゃんちは、バス停からすぐでしょう?」
「わかったわ。じゃあお願いするね。おだちんに500円あげる。おかしでも買いなさい」
「わぁい、ありがとう」
「おばあちゃんの家についたら、でんわするのよ」
「わかった。じゃあ、行ってくるね」
おばあちゃんの家は、森を抜けてすぐのところです。ゆいちゃんは、たくさんの木々の中をとおるその道が大好きでした。
ゆいちゃんが、バス停でバスを待っていると、バスがやって来ました。
ゆいちゃんがバスのうんてんしゅさんに聞きます。
「あさひがおかには行きますか?」
「行くよ。えらいねぇ。ひとりでおつかい?」
「うん、おばあちゃんちにぶどうをとどけにくの」
「そうかい。じゃあ、あんぜんうんてんでいくよ」
バスがうごきだします。なんにんかの人がのりこんできます。
そうしているうちに、バスは森の中の道に入って行きました。
ワクワクしながら、外を見ていると、道ばたに茶色い小さなまんまるとしたものをみつけました。うごいてはいません。
(へんね。うさぎさんみたいだけど・・・。もしかして、けがをしているのかも)
ゆいちゃんは、ブザーをならします。
「おります、おりまぁす!!」ゆいちゃんは、ひっしでさけびます。
「あさひがおかまでいくんじゃなかったのかい?まだ、ずいぶんあるよ」バスのうんてんしゅさんは、ふしぎそうです。
「あの・・・そのぉ。お花をつんでいきたくなって。ここからだったら、なんとかあるけるので」
「わかった。けっこう、車がとおるから、きをつけてね」
ゆいちゃんは、バスをおりると、もと来た道をかけだします。
(うさぎさん、うさぎさん、どうかぶじでいて)
しばらくして、うずくまっているうさぎさんのところにたどりつきました。
うさぎさんは、あしから血をながしています。
息はまだあるようです。
「いたそうね・・・」
ゆいちゃんは、ハンカチを取り出すと、うさぎさんの足にまいてあげました。
(たしか、おばあちゃんの家に行く途中に、動物びょういんがあったはず。)
ゆいちゃんは、うさぎさんをだっこすると、あるきはじめました。
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「えっ。まだついていないんですか?」
ゆいちゃんからのれんらくがないのをしんぱいしたゆいちゃんのママが、おばあちゃんにでんわしておどろきました。
「ええ、まだよ。バス停までむかえにいこうかしら」
「行きちがいになるとこまるから、そこにいてください。わたしが、そちらにいきます」
「そうね・・・なにがあったのかしら」
ゆいちゃんのママもおばあちゃんもしんぱいそうです。
ゆいちゃんのママは、家事をほっぽりだして、バス停へむかいました。
おばあちゃんの家についても、やっぱりゆいちゃんはまだついていなくて、ますます心配になります。
(いったいなにがあったのかしら。まさか、さらわれたとか)
悪いほうへ、悪いほうへ、考えが行ってしまいます。
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そのころ、ゆいちゃんは、やっと動物びょういんに近づいてきたところでした。
「がんばって。もう少しだからね」
ゆいちゃんは、うさぎさんにかたりかけます。
(あともう少し)
ゆいちゃんは、足がいたいのをがまんしながら歩きます。
「ついたぁ。」
ゆいちゃんは、動物びょういんのドアを開け、受付のお姉さんに言います。
「この子をたすけて」
お姉さんは、きずを見て、先生をよびます。
「先生、急いでください」
やさしそうな、30さいくらいの先生がしんさつしつから出てきます。
「これは・・・骨がおれているね。すぐにちりょうだ」
「あの…お金がこれしかないんです」
ゆいちゃんは、不安そうに500円玉を見せます。
「それでじゅうぶんだよ」先生はえがおでいいます。
すぐに、うさぎさんは、しんさつしつに入って行きます。
(そうだ、ママとおばあちゃんがしんぱいしてる。おばあちゃんに電話しなきゃ)
「すみません、電話をかしてください」
ゆいちゃんは、おばあちゃんの家に電話をすると、いままでのいきさつを話しました。
すぐに、ゆいちゃんのママとおばあちゃんがとんできました。
「ゆい、心配させないでよ・・・」
ゆいちゃんのママがゆいちゃんをだきしめます。
「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
「でも、うさぎさんを助けたのはえらいね。ママはゆいをほこりにおもうよ」
ゆいちゃんは、ちょっとはずかしそうです。
しばらくして、しんさつしつのとびらがひらきました。
「1かげつほどしたら、また、つれてきてください。どうなっているか、見ます」
「あの、ちりょうのお金は・・・」ゆいちゃんのママがおさいふをだそうとします。
「もう、いただきました。ねっ!」せんせいは、ゆいちゃんにウィンク。
「でも、それだけじゃあ・・・」
「いいんですよ。ゆいちゃんの、やさしさがこの子の命をすくったんです」
「ねぇ、ママ」ゆいちゃんが言います。「先生に、ぶどう1ふさ、あげない?おばあちゃんの分が2ふさになっちゃうけど」
「わたしは、かまわないよ」ゆいちゃんのおばあちゃんもいいます。
「じゃあ、先生、これを。とても甘くておいしいと、うわさになるほどのぶどうなんです」
「ありがとう。いただくよ。」
ゆいちゃんたち3人が、うさぎさんをつれて動物びょういんを出ます。「ゆい、この子を大切にする」
それからずっと、ゆいちゃんとうさぎさんは、なかよしのともだちになりました。
おしまい。