弥生花音 童話集 1
ふしぎなくぅちゃん
むかしむかし、あるところに、みずきちゃんという5さいの女の子がいました。
みずきちゃんには、大好きなくまのぬいぐるみのくぅちゃんがいました。ママとパパが誕生日にくれた、大切なくぅちゃん。どこにいくにもふたりはいっしょ、ねるときだっていっしょ、おふろのときも外で待っていてくれます。ようちえんに行くときだけはいっしょににいられないけれど、いっときもくぅちゃんのことを忘れることはありません。
そんなある夜のこと、くぅちゃんをだいてベッドに入っていたみずきちゃんでしたが、なかなかねつけませんでした。時間はもうすぐ12時です。
そのときです。うでのなかのくぅちゃんがむくむくっ、とうごき、するり、とみずきちゃんのうでからすりぬけました。
「みずきちゃん、行ってきまぁす」
そう言ったかと思うと、まどを開け、ぽぉんと飛び降りて、てくてく歩き始めました。
「な、な、なにが起こったの?と、とりあえず、おいかけなきゃ」
みずきちゃんは、ママとパパを起こさないよう、しずかにかいだんを下り、げんかんを出ました。くぅちゃんは、ちょっと先の角を曲がるところでした。
「どこに行くの?その先は森よ?」
くぅちゃんは、そのまま森の中をずんずん行きます。
(夜の森、こわいなぁ。でも、行かなきゃ)
ホー、ホー、というふくろうのなき声が聞こえる以外はしずまり返った森です。そこに、木でできたちいさな小屋が見えました。くぅちゃんはそこにはいっていきます。つづいて、うさぎさんのぬいぐるみや、わんちゃんのぬいぐるみも。
「わたしは、ゆめをみているのかしら?」
ゆうきをだして、みずきちゃんはドアを開けてみました。そこでは、動物のぬいぐるみたちがお茶をのんでいます。
「みずきちゃん、ぬいぐるみたちのお茶会へようこそ」
くぅちゃんが言いました20人くらいのぬいぐるみたちがいます。
「みずきちゃんは、ねむれなくなっちゃうから、ミルクね、はい。」
ちいさなカップに入っていたミルクは、あったかくて、あまくて、ほっこりした気分になりました。
「ママやパパが起きたらしんぱいするから、おくっていくよ。たかさんをよぶね」
ドアを開けて、くぅちゃんがぴぃーっ、とくちぶえを吹くと、おおきなたかさんがきました。
「こわがらないで、乗って。さぁ、行くよ」
たかさんが飛び上がり、ふたりは星がつかめるほどの空高くとんでいました。とおく、町あかりがみえます。
「きれいー」
「みずきちゃん、きょうのことはだれにもいわないでね。ママやパパにもだよ。ふたりのひみつ」
「うん、ひみつ」
家につくと、ふたりはそーっとママとパパのへやをのぞきました。ふたりとも、よくねむっています。
「よかった」みずきちゃんとくぅちゃんはほっとしました。
でも、みずきちゃんは、ひとつきになることがありました。
「くぅちゃん、またあしたから、おはなしできないの?」
「とくべつに、ねるまえの1じかんだけおはなししようか」
くぅちゃんはウィンクしました。「だから、今日みたいに危ないことはしないでね。やくそくだよ!」
「うん、やくそくするわ」
「じゃあ、今日はおやすみ」
くぅちゃんは、またまどから、ぽぉんと飛んで、あるいていきました。
つぎの朝、みずきちゃんはとてもふしぎなきもちでめざめました。くぅちゃんはうでのなかでいっしょにねていたのです。
みずきちゃんは不安でしたが、やくそくどおり、まいばん、くぅちゃんとねるまえの1じかん、おはなししました。友だちの話、楽しかったこと、かなしかったこと。
くぅちゃんはみずきちゃんにとって、今まで以上に大切な、大切なお友だちになったのでした。
おしまい。
みずきちゃんには、大好きなくまのぬいぐるみのくぅちゃんがいました。ママとパパが誕生日にくれた、大切なくぅちゃん。どこにいくにもふたりはいっしょ、ねるときだっていっしょ、おふろのときも外で待っていてくれます。ようちえんに行くときだけはいっしょににいられないけれど、いっときもくぅちゃんのことを忘れることはありません。
そんなある夜のこと、くぅちゃんをだいてベッドに入っていたみずきちゃんでしたが、なかなかねつけませんでした。時間はもうすぐ12時です。
そのときです。うでのなかのくぅちゃんがむくむくっ、とうごき、するり、とみずきちゃんのうでからすりぬけました。
「みずきちゃん、行ってきまぁす」
そう言ったかと思うと、まどを開け、ぽぉんと飛び降りて、てくてく歩き始めました。
「な、な、なにが起こったの?と、とりあえず、おいかけなきゃ」
みずきちゃんは、ママとパパを起こさないよう、しずかにかいだんを下り、げんかんを出ました。くぅちゃんは、ちょっと先の角を曲がるところでした。
「どこに行くの?その先は森よ?」
くぅちゃんは、そのまま森の中をずんずん行きます。
(夜の森、こわいなぁ。でも、行かなきゃ)
ホー、ホー、というふくろうのなき声が聞こえる以外はしずまり返った森です。そこに、木でできたちいさな小屋が見えました。くぅちゃんはそこにはいっていきます。つづいて、うさぎさんのぬいぐるみや、わんちゃんのぬいぐるみも。
「わたしは、ゆめをみているのかしら?」
ゆうきをだして、みずきちゃんはドアを開けてみました。そこでは、動物のぬいぐるみたちがお茶をのんでいます。
「みずきちゃん、ぬいぐるみたちのお茶会へようこそ」
くぅちゃんが言いました20人くらいのぬいぐるみたちがいます。
「みずきちゃんは、ねむれなくなっちゃうから、ミルクね、はい。」
ちいさなカップに入っていたミルクは、あったかくて、あまくて、ほっこりした気分になりました。
「ママやパパが起きたらしんぱいするから、おくっていくよ。たかさんをよぶね」
ドアを開けて、くぅちゃんがぴぃーっ、とくちぶえを吹くと、おおきなたかさんがきました。
「こわがらないで、乗って。さぁ、行くよ」
たかさんが飛び上がり、ふたりは星がつかめるほどの空高くとんでいました。とおく、町あかりがみえます。
「きれいー」
「みずきちゃん、きょうのことはだれにもいわないでね。ママやパパにもだよ。ふたりのひみつ」
「うん、ひみつ」
家につくと、ふたりはそーっとママとパパのへやをのぞきました。ふたりとも、よくねむっています。
「よかった」みずきちゃんとくぅちゃんはほっとしました。
でも、みずきちゃんは、ひとつきになることがありました。
「くぅちゃん、またあしたから、おはなしできないの?」
「とくべつに、ねるまえの1じかんだけおはなししようか」
くぅちゃんはウィンクしました。「だから、今日みたいに危ないことはしないでね。やくそくだよ!」
「うん、やくそくするわ」
「じゃあ、今日はおやすみ」
くぅちゃんは、またまどから、ぽぉんと飛んで、あるいていきました。
つぎの朝、みずきちゃんはとてもふしぎなきもちでめざめました。くぅちゃんはうでのなかでいっしょにねていたのです。
みずきちゃんは不安でしたが、やくそくどおり、まいばん、くぅちゃんとねるまえの1じかん、おはなししました。友だちの話、楽しかったこと、かなしかったこと。
くぅちゃんはみずきちゃんにとって、今まで以上に大切な、大切なお友だちになったのでした。
おしまい。