ストロベリー・バレンタイン
 まるで、吸い付くみたいに。



 口の中に、入れちゃうみたいに。



 ゆっくりと何度も、味わう様に。



 少し、焼き焦がしてしまう様に。







 キスの雨が、降り注ぐ。






「…………あの、…………樹君…?」








「…………何」







 キスはいつの間にか、
 私の首筋にまで、落ちて来る。










「…………そろそろ…」








 …限界だよ、もう…!









「…………まだ駄目」





 その青白い炎の瞳が、
 生き物のように動きながら
 私に向かって煌めいている。


 

「許して欲しいんでしょ?」





 また、キスの雨が降って来る。





「…………うん」






「俺の、言う通りにするんでしょ?」







「…………」








「目、瞑って」









 言われた通り、目を瞑る。







「口、少し開けて」







 言われた通り、口を開ける。






 すると彼は、





 私の口の中に何かを入れた。






「…………?!」






 食べた事の無い味。






 甘酸っぱくて、
 ふんわりしていて柔らかくて、
 とっても優しい味。






 私は目を開け、彼を見た。





「これは、…チョコレート…?」





 彼は悪戯っ子の
 子供の様な顔で笑った。





「企業秘密…。これは俺一人で開発中だからね」





「…………!」






 仕返しされた。






「これは俺が想像していた、苺の味」







 ……………………!!!







 彼は私に、もう一度
 味わう様なキスをした。









 そして、少し首を傾げた。







「…………まだ少し、違うかも」






 もう一度、



 彼は私に、
 深い深いキスをした。






「…………もう少し、甘くしないと」







 彼は私を
 あの青白い

 炎が煌く
 瞳で見つめた。
 






「もっとちゃんと教えてもらわないとね?…苺の、味」







 溶かされそうなひと時は、


 彼の家族がこの家に


 帰って来るまで



 …続いたのでした。





















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