ストロベリー・バレンタイン
 彼は光沢のあるグリーンの包み紙と、ベルベット生地の白いリボンのラッピングを、私の目の前で開けた。



 白い箱を開けて中のチョコレートを一目見た途端、彼の表情が変わった。



「…………!」



 一瞬、私の目を見た彼のその瞳には、
 また、青白い炎が揺らめいた。



 …その輝きに、魅入られてしまう。



「…………これ何?ルビーチョコ?」


 興味を持って聞いてくれたので、私は思わず彼に打ち明けたくなったが、これは自分一人で開発したお菓子ではないので、内緒にしておかなくてはならない。


「…企業秘密なの」


 彼は一瞬、瞳の奥の青白い炎を揺らし、私を熱い視線でじろっと睨んだ。


「…俺には教えてくれないんだ?」


 …怖!!

 また焼かれそう!!


「…ごめんね」


 彼は全く納得いかない表情を浮かべながらも、チョコレートを一つつまみ上げ、じっと見つめた。

「7つある。ちゃんと苺に見えるね…形はゴツゴツしてて、いびつで不揃いだけど」


 すごく、具体的な感想…………!


 彼は目を瞑ってチョコレートを顔に近づけ、その香りを嗅いだ。


「いい香り…」


「…………!」


 その目を開けて、もう一度チョコを見る彼。


「色がすごく綺麗で可愛い。見ていて段々、ワクワクして楽しくなって来る」


 …………!


 今、彼の瞳の奥で楽しそうに、
 炎が踊っている様に見えた。



「まるで君みたい。…可愛くて」




 …………!!





 一粒目のチョコレートを、彼は口の中に入れた。

 味わう様にゆっくりと、
 私の目の前で苺トリュフを食べる彼。



「この食感…マシュマロ…?」




 その艶のある唇に、
 …視線が惹き寄せられてしまう。



「しっとりしていて甘すぎなくて…優しい。…この味、俺は大好き」



 …………!!



 …嬉しい!!
 …彼が褒めてくれた!!!



「マシュマロじゃないの。チョコレート」


 彼は私を見た。


「どうやって作ったの…?」


 さっきよりももっと、
 その瞳の炎は、熱くなっている。


「…………企業秘密なの」


 急に彼は、
 息がかかるくらいの距離で
 私を見つめながらこう言った。



「また秘密なんだ。…君はすごく甘そうに見えて、本当は全然、そうじゃないの?」




 彼は私の肩を、ぐっと引き寄せた。





「木下さん」








「……はい!」








「本当に、君は俺の事好きなの?」







 私は息が止まりそうになりながら、
 こくんと一度、頷いた。






 顔がどんどん、赤くなっていく。






「じゃあ…もう、両想いだね」







「…………!」






 彼の右手が私の頬に触れた。







「…そういう顔を見せるのは、俺だけにして」






 彼は私の髪を優しく撫で、
 その顔を、私にそっと近づけて、







「…反則なくらい可愛い。…ドジおとめ」






 私の唇に、
 甘くて優しい、キスをした。







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