。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
「そうだな、最初から説明しようか」
俺は両足についた腕で手を組むと
「最初に……お前が俺たちに攻撃を仕掛けてきたのは、俺が急性胃炎で御園医院に入院したときだ。
あんたは“仲間”を使って俺を…いや、俺たちを襲わせた」
と切り出した。
「何の意図があったのか分かりませんが」と響輔が後を引き継ぎ「本当はこう思わせたかったんじゃないですか?スネークは単独行動をしていない。
仲間が大勢居る、と。
元は玄蛇は暗殺集団と聞いています」
響輔が強弱のない淡々とした言葉で説明をし
「ほぉ、なるほど?それで?」とタイガは面白そうに目を細めて先を促す。
「だが最強の暗殺者はほとんど仲間を作らない。面が割れて、寝返られたらアウトだ。
商売あがったりだろうしな。
だからお前はにわか仲間を使った。人選は特にこだわったわけじゃなさそうだ、金で動く小物だったな、俺たちはあんな弱いヤツにやられるタマじゃない」
「まぁそうだね。多少金が掛かったが、領収書はとってある、あとで経費で落とすさ」
タイガは作り物のような笑顔でにこっと笑った。
笑えない冗談だな。
「だが君たちの考えとちょっと違うな。集団と思わせたかったわけじゃないし、本気で君たちを殺せるとは思っていない。
君たちの力量をちょっと測ってみたかったんだ。ただし、これは契約の範囲外。私自身が向かうのは時間と体力の無駄だ。
私の信条を知っているかい?
―――無駄なことはしない。
だから事前の調査は必要最低限する必要はある」
「それで“外注”を頼んだってわけですか」
響輔が揶揄するように言い、その言葉にもタイガはにっこり笑顔を響輔に向ける。
「“派遣社員”はなかなか使い物にならなくてね」
「その小物の……使い捨ての“駒”…いや“派遣社員”の手と、あんたの腕には同じ絵柄のタトゥーがあった。
最初“仲間”の印なのかと思ったが、違う。
後から“始末”するため、分かりやすくしただけだ。あのとき俺たちを襲ってきた刺客はドクターの一人に扮していた。それらしい白衣を着りゃドクターの一人として紛れ込むことができる。
俺たちを襲うのには役立ったが、その後の“後始末”には不便だ」
俺の推理に口を挟むことなくタイガは面白そうに目を細めて口元に薄い笑みを浮かべた表情を崩すことはない。
「ふぅん。でも、始末した後はどうする?それらしい遺体なんて上がってないだろう?
私は合理的な主義でね。どこぞの山に死体を捨てて埋めると言う面倒なことは好まない」
仲間の存在は認めたが、そのあとのコロシは認めないってわけか。
なるほど、じゃぁ駒をこう進める。
俺はテーブルに手をつくと、再び僅かに身を乗り出し
「あんたはクリーナーだ。
意味は分かるだろ?
合理的主義のあんたには最も安全で、かつ面倒な作業でもない」
と笑いかけた。