。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
響輔はソファをがたつかせて立ち上がり、
「待て!響輔っ!」俺が止めに入るより早く、響輔はテーブルにダンっ!と音を立てて脚を乗せてタイガの胸倉を掴んだ。
「いいか、この変態!!
一結に手ぇ出すんじゃねぇ!!
依頼主の正体、はよ言えや!!」
いつも冷静な響輔がここまで激昂しているのは稀なことだ。
「冷静な君らしくないね、ヒヨコちゃん」と胸倉をつかまれてもまだタイガは余裕顔だ。響輔の掴んだ手の上にタイガは手を乗せる。
いや、余裕なんかじゃない。これは俺たちに対する
攻撃。
響輔を怒らせて俺たちのチームプレイを切り崩そうとしている。
「響輔!落ち着け!」俺が響輔の腕を掴んだが、響輔は乱暴な仕草でそれを払い
「お前が吐かん言うんならな!!吐かせたるわ!!」
響輔はテーブルに足を付き、乗り上げるようにタイガに掴み掛っていた。テーブルに置いてあったコーヒーカップが床に落ち、派手な音を立てて割れ中身が床に飛び散る。
「響輔っ!やめろって!!」
と、俺は響輔の背後から羽交い絞めにしてタイガから引きはがそうとしたが、響輔は微動だにしない。
だが、案の定この怒鳴り声に、事務所で働いていた組員が何事かざわつきだす。
ちっ!分が悪くなってきた。
「お前が一結に惚れとることぐらい知ってんねん!!
いいご身分だな!妻子がありながら若い女に入れ込んで!!
ほんまは俺のこと最初に殺したいんやろ!!」
響輔の怒鳴り声に
ぴくり
タイガの眉が微かだが動いた。
虚を突かれたような感じで、一瞬だが初めて動揺を見た。
だがそれはほんの一瞬で―――
なるほど
カードはイチってことか。
だが、タイガは次の瞬間、うっすらと……
いや、今までもこいつはこっちを挑発するかのように一定の笑顔を取り繕ってはいたが、はじめて―――
びっくりするぐらい冷たい笑顔を浮かべていた。作り物ではなく、そこにはじめてヤツのむき出しの感情を見た気がする。
何だ―――……?