。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
は―――……?
タイガの意外な申し出にちょっと面食らった。
「私にも守りたいものがある。
和則と椿紀に手を出さないでほしい。
そうだな、一週間……休戦としないかい?君たちが約束を守ってくれたら、私も君たちの大切なものに手を出さない」
「よく、そんな都合のいいことが言えるな。お互い“手を出さない”と『契約書』でも交わすのか?それとも“保証書”か。
アホらし。取引を持ち込んでくるんなら、もっと確実で価値のあるもん寄越さんかい」
俺が脚を組んで横柄に言うと
「君たちはそう言ってくると思ってたよ。もちろん、ただで、とは言わない。
だから私も取引材料を用意した」
タイガはスーツの胸ポケットから長さ10㎝も満たない小さなガラス瓶を取り出し
「龍崎 朔羅に投与した薬の
解毒剤だ。
これがあれば、ヒヨコちゃんの免疫を彼女に投与しなくてもいい」
低く笑いながら、それを俺たちの前でふらふらとかざした。
「―――解毒剤…?」
俺が目を開いてその小瓶の中でゆらゆら揺れる透明の液体を見つめると
「ほんまかい。毒でも入ってるんちゃう?」と、響輔はさっきの怒りが鎮まってないのか不機嫌そうに唸る。
タイガはそう言われることも予想していたに違いない。
「毒じゃないよ。証明してみよう」
と小瓶から一滴、ホットコーヒーの中に落とし入れ、湯気が立ったコーヒーの香りを楽しむようにカップを回し、そしてゆっくりと一口、口にした。