。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
マサはちょっと考えたが
「いや、居ませんでしたけど……お嬢しか」
と答えを出した。
「……じゃ、じゃさ!女医さんとか看護師とか居なかった?」
女の、と付け加えると、それにもマサは首を横に振った。
視界が真っ暗になる瞬間、あたしは確かに聞いた。
女の声を。
しかもその女―――
関西弁だった。
『うちらが“フリーランス”を語ってるんは
風向き次第でどちらにでも“靡く”から―――』
そこまでは覚えてる。だけどその後の台詞は曖昧だ。
何か言ってた気がするけど覚えてない。
大事な何かを――――
やっぱ夢……なんだろうか。
「さっきも言いやしたけど、ここにはお嬢だけでしたよ。
しかもここ、女医はほとんど居ないじゃないですか、女の看護師も他の病院に比べりゃ少なくて、唯一女と言えば、受付と会計係じゃねぇすか?」
まぁ、マサが言うのは一理ある。
あたしはちっさい頃から何かあったらこの病院の世話になってたし。
と言っても滅多に風邪とかひかないから、あんま知らないだけかもしれない。
「頭の検査して帰りましょう!」と、ワケが分からないことを言うあたしをマサはどうやら「転んだフシに頭を打っておかしくなった」と勘違いしてるみてぇ。
まぁ??多少は……てか結構?おバカなあたしがそんなにハッキリと覚えてる程、精巧な脳の造りだけじゃないことは確かだ。
でも「おかしくなった」と言う感覚はないし、意識だってしっかりしてる。
だが、ここで幾ら考えたからって答えが見つかるわけでもない。
あたしはぴょんと立ち上がると、スカートにくっついた埃を払い
「あたしゃ大丈夫だ。今日んところはな。それにドクター鴇田も今日は忙しいみてぇだから、検査は後日にする」
と言うとマサは目に見えてほっと安堵した。だがしかし
「絶対、検査してくだせぇよ」と言ってあたしの頭を優しく撫でた。