。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
タイガはコーヒーを確かに飲んだようだ。ごくりと喉が動くのをきっちり見届け、
「最高級のブルマンはやはり味が違うね。
スペシャルドリンク」
と、口元に微笑を浮かべる。
タイガが言う通り、本当に毒は入っていないのだろう。
だが
解毒剤―――……?
そんなものが存在するなんて知らなかった。
クスリは体外に出たら消える、と漠然と考えていた。
スネークは俺の抗原で発症し、響輔の免疫で元に戻ると言っていたが…
今まで薬の成分を解析しようと必死だった。
だが、またいつクスリを投与されるかが分からない。迂闊に朔羅に近づけなかったわけだが。
解毒剤があるのなら朔羅にクスリが投与されても、変化を防げる。
「この解毒剤の効果はちょうど一週間。
きっと彼女の体内から、ほとんど無くなっているとは思うが、
でも少しでも可能性があると危険だ。君は愛しの龍崎 朔羅には触れられない。
大阪から対馬兄妹を呼び寄せたことは私も知っているよ?
これが欲しいんじゃないかい?」
何故、対馬兄妹のことを知ってる―――
あいつらの存在は玄蛇一族と同じぐらい、伝説じみたヤツらだ。その情報は一切非公開だと言うのに。
だが、プロの殺し屋ならいくらでもネットワークがあるのだろう。
タイガが微笑を浮かべて身を乗り出し
「どうだい?最高の取引材料と思わないかい?ヒツジちゃん」と薄く笑った。
確かにそうだ。クスリ抜きはほぼ成功しているが。タイガの言う通り、完全とは言いがたい。
しかも対馬兄妹を呼び寄せたことも知ってるとなると―――
俺は乱暴にその小瓶を奪おうとしたが、タイガはさっとそれを宙に取り上げた。
「一週間、沈黙してくれるね?」
楽しそうに唇に手を当て「しー」と内緒話をするように小声で言った。
「一週間、沈黙を守ってくれると約束したのなら、私はこの解毒剤を君に渡そう。
好きなだけ、キスでもセックスでもしたまえ。
一週間の沈黙を守ってくれれば、その後、また再戦と行こう。
君たちが“勝った”のなら、解毒剤のレシピも渡そう」