。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
タイガが笑顔で小瓶をかざし、俺はそれをぶんどってやった。
「ご足労ありがとう。
お帰りはあちらだ」
と、わざと丁寧な口調で言ってタイガは来客室の出入り口を手で促す。
響輔はタイガを睨んだまま、大人しく来客室を出て
それに続くように出ようとした俺は、ふと振り返った。
「なぁあんた、ほんまの名前は
護矢と飛影どっちなん―――?」
と、まだ座ったままのタイガを見下ろすと、タイガはちょっと苦笑。
「そこまで知っていたとは、ね。ま、深夕の存在を知っていたのなら、頷けるが。
対馬兄妹に聞いたのかい?」
「それに関しての情報元は教えられへん」声を低めると
「飛影。
私の本来の名前は
玄蛇 飛影」
タイガはどこか遠くを見ているように、視線を揺るがせ
「ふーん、いかにも攻撃的なあんたにお似合いやん」と言うと
「お褒めの言葉どーも。
でも、私は今の名前が気に入ってるんだ」
タイガは視線を戻し、調子を戻しにっこり笑顔。
「あそ」
小さく吐き捨て、
バタン!
俺は乱暴に来客室の扉を閉めた。
勝ったのか負けたのか、正直今の俺には分からない。
タイガがこんな回りくどいことをしてでも、手にしたい本来の"目的"が他にある筈だ。Tなる女は契約更新を渋っていた。最初はイチの"見張り"だけだったが、Tも本来の依頼内容は違った筈。
Tの目的が青龍と白虎の滅亡だと思えば何となく納得できる。でもタイガの方は?恐らくそれはきっと青龍と白虎の滅亡じゃない。
それを隠れ蓑に…何かとてつもない『悪』を隠している。今日のこいつを見ててそんな気がした。
それが分からない今、
引き分けって感じだが、
次は容赦しない。
俺たちは必ず勝ってみせる。
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