。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
*戒Side*
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** 戒Side **
鴇田の事務所から出るとすぐに、出口のすぐ傍で張っていたのか大本命の彩芽さんがちらりと流し目を寄越してきた。
今日はいつもの和服姿じゃなくてパンツスーツ。髪も下ろしている。
見慣れない、いつもと180度違う格好に最初は誰だか分からなかったが、危険な香り
オピウム
が彩芽さんと言うことを証明している。
彩芽さんは何でもないように腕を組んで壁にもたれかかっていたが、その腕の下ちらりと拳銃の銃口が光っていた。
「タチバナは?」と俺が前を向いたまま聞くと
「彼は違うポイントで待機よ。どうだった?」
と言葉少な目に低い声で聞いてきて
「失敗だ。刑事たちを下がらせてください」と言うと
彩芽さんはちょっとため息をつき、襟元に刺してあるのだろうインカムで
「失敗よ。全員退いて」と短く命令。
俺は口を噤んだまま彩芽さんの横を素通り。隣で響輔も同じようについてきた。
彩芽さんがそれを追ってくる、と言う形になり
事務所玄関の階段を降りていると
「君たちを黙らせる、何かネタを持っていたってわけ?」と背後からちょっと緊張を滲ませた声で聞かれ
「そうです」と俺は短く答え
「それもとてつもない、でかいネタだ」
彩芽さんに聞こえない程度でぼそりと呟いたが
彩芽さんの耳に入っていたのだろう、彩芽さんは小さく吐息をついた。
「そのネタってやつ、教えてもらうわけにはいかないようね」
話が早い。頭の回転がいいし行動力もある。権力もありそうだ。ダテに四課の警部を名乗ってるわけじゃないな。
「今は難しいです。一週間沈黙してくれませんか」
と響輔が説明し
「ワケも話せないの?スネークと取引でもした?」と聞いてきて
「それも話せません」俺はキッパリと言った。
彩芽さんも、それ以上は聞いてこなかった。
俺たちの口を割らせようとしても無駄だと踏んだに違いない。