。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
「ただし、気になることはある」
タチバナはナインピックと言うアブサンを一飲みすると、タバコを取り出した。
「気になること?」俺もタバコを取り出し
「毎月、月初から中旬に掛けて、約80万の支出がある」
「家賃や生活費なんかじゃないのか?」俺がグラスに口を付けると
「家賃、光熱費は3つある銀行口座の一つから引き落とし。食費だとしても80万と言う数字は少しおかしくないかしら?しかも毎月ってことは定期的に使用しているってわけよね」
彩芽がメニュー表に指を滑らせて、眺めている。やがて小さく頷き
「やっぱり生ハムにしようかしら。チョリソーもいいけど」
「どっちでもいいだろ?確かにその金額を食費と考えるのはちょっと無理があるな」彩芽が頼もうとしていた生ハムもチョリソーも¥1,500程。
毎日このような食事をしたとしても、やはり80万には程遠い。せいぜいいって5~10万だろう。
「鴇田組の事務員に聞き込み……は流石に無理があるからな、周辺で大狼の写真を見せて聞き込みしたら、周辺のコンビニでいくつか目撃情報があった。目立つ容姿だからな、ある意味助かる。近隣の住民や会社勤めの人間にも聞いたが、あそこは殺人的に忙しいらしい。大狼は出社すると、ほとんど社を出ることなく、そのほとんどが片手で済ませられるコンビニのおにぎりやサンドイッチ、それからカップラーメンが多い、と推測されるな」
「身体に悪いな」と俺が苦笑いで答えると
タチバナが「チーズ盛り合わせ追加で」と付け加え
お前ら、まともに“会議”してるってのに、どんだけ食うんだよ。てか彩芽……意外と食うな、と心の中で突っ込み
「まぁ俺も似たような生活してるからな。それに関しては何も言わんが、そうだったら尚更80万の説明がつかなくなるな」
と口からタバコの煙を吐き出し
「そこが不思議な所よね。スネークが仕事を請け負っているのなら入ってくるお金はあっても出て行くお金はそれほど無いんじゃないかしら」
「使途不明金か。でも何か理由がある筈」
「考えられるのは、日本の口座で……しかも給与分から引き下ろして、どこかに送金するわけでもなく手元に置いているのは
誰かに手渡しで渡している―――」
彩芽がグラスに口を付け、俺に流し目。
きっと二人でもその“誰か”の見当もついていないのだろう。
でも
恐らくその使途不明金の行方と用途を
白虎のガキ共が気づいた―――