。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
それから3年程、キリは実際良く働いた。おまけに仕事もデキるし早い。
俺がキリを採用したのには、本当に“玄蛇”だった場合、いずれキリを利用できると踏んだから。もし“玄蛇”でなくともキリの仕事っぷりを手放すのは勿体ない。
キリは言った。青龍の中枢に居れば自分の身が安全だと。
だが、そうだったらどうしてこのタイミングで現れたのか、謎は残るが。
それまでキリは名前を変えひっそりと暮らしていたらしい。この女程“ひっそり”と言う言葉が似合わない女は居ないが、
キリの前の職場に確認したところ、確かに『鬼塚 朝霧』と言う女は存在したし、メールで本人かどうか写真の確認までしたが、間違いなく本人だと言う。
それまでキリはどちらかと言うと目立たず、また親しい友人も作ることなく、黙々と仕事をこなす地味な事務員だったと言うからキリが言ったことは本当なのだろう。
戸籍も住民票も確認済みだが、『鬼塚 朝霧』と言う名に不審な点はない。
きれい過ぎる経歴が、逆に不信感を煽った。
考えられるのは一つ。
戸籍の乗っ取り
恐らく、ホンモノの鬼塚 朝霧と言う女はもうこの世のどこにもいないだろう。
戸籍の乗っ取りはそうやすやすと出来るものじゃない。昨今は戸籍の売買もされる時代だが、キリが一体どのタイミングで本物の鬼塚 朝霧とすれ変わったのかは不明だ。
―――玄蛇
状況証拠だけだが、キリが本物の「玄蛇」の生き残りだと言うことはほぼ違いない。