。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
玄蛇はうっすら笑い、ウェイターにお代わりのウィスキーを頼んでいる。
「答えなさいよ!あんたが売ったの!」
とうとう声を押さえきれなくて、怒鳴りこむと玄蛇は軽く肩をすくめた。
こないだと同じ、やはり客たちが何事かこちらを気にするように視線を寄越してきたが、あたしは無視を決め込んだ。
「売ったのは私じゃない。“女優としての君”にもっとも近しい人間だ」
女優として……近い…?
まさか―――
「あのマネージャーが売ったって言うの…?」
だってマネージャーは、あのアイドル様の事務所に盾突きたくないような…できれば穏便に済ませたい雰囲気だった。
にわかに信じられなくてあたしは額に手をやった。
だけど、あたしが自殺を図ったことを知ってるのは、玄蛇以外……御園医院の医師のごく僅か…
それに、
マネージャー
「でも……何で…」
ワケが分からず、項垂れていると
「確かに写真を撮ったのは私だが、それをうまく利用したのは彼女自身の判断だろう」
うまく―――利用……?
「私の信条を覚えているかい?」
突如、全然違う会話を引っ張りだされて、あたしは額を覆ったまま
「無駄なことはしない、でしょ」
うんざりしたように言い切ると
「そう。私は何事においても合理的な方法を好む。
故に、負けると分かっている勝負には挑まない。
つまり、君はこの世界の勝者になると
君の勝ちだよ。
私を負かすことができたのはたった一人だ。勝負を挑むべきではなかった」
勝者―――それはこの芸能界で成功すると言うこと?
それは誰にも分からないことなのに、玄蛇は確信のある物言いだ。
「あんたを負かすなんて相当な強者ね。ネズミ?それともあんたが例えた“鏡”」投げやりな感じで皮肉ると
「確かに相当だね。
私を打ち負かしたのは、今までこの世でたった一人―――
鷹雄 響輔
だけだ」