。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
え――――……?
思わず額から手を退けて目を上げると
「言ったろう?私は合理的主義だ、と。
無駄なことはしない。よってあのアイドルの写真を撮ったのも無駄ではない。
私はただ“材料”を用意しただけだ。それをいかに“料理”するかは、料理人の自由。
さっきも言ったが、私は負ける勝負に挑まない。
君は―――
女優として成功する」
玄蛇の言葉を聞いて、あたしは目を細めた。
「何それ、恩着せがましい言い方ね」
「初期投資だ。勝者になり得る者には努力や金を惜しまないタチでね」
「それを恩着せがましいって言ってるの。あたしは頼んでない」
「頼まれてない」
玄蛇が返し
「何なのよ、あんた…」いつもの調子に戻ってため息を吐くと
「そこら辺にいる単なる合理的主義者さ♪」と玄蛇もいつも通り。
そこら辺?よく言うわ。殺し屋なくせに。
だけど―――
あたしたちは自然顔を合わせてどちらからともなく笑った。
さっきまでの恐怖心や怒りはどこかへ吹き飛んでいた。まるで風がさらっていったように。
「どうも神妙なものは合わないみたいだ」と玄蛇が笑い
「でしょうね」とあたしも笑った。「あたしも堅苦しいのは嫌いよ」
「気が合うね。どうだい?今からベッドでも。
君は私の寝首をかくこともできる、一石二鳥じゃないか?」と玄蛇がからかうように笑って
「行くかボケ」と、あたしはぞんざいに言って腕を組んだ。
「残念だな、得意だろ?“枕営業”」
「あんたもね。変人なくせに美人ばっかと」
あたしの言葉に玄蛇は喉の奥で笑い、ふとその笑いを止めた。どこかぼんやりと遠くに視線をやり
「鷹雄 響輔とは―――
寝たのかい?」
と突如として響輔の名前をひっぱり出されて、あたしは口を噤んだ。
「無言はNoの意味合い?」と玄蛇がグラスを傾けながら聞いてきて
「さぁね。ご想像にお任せするわ」と、冷たく言ってつんと顔を逸らせた。
寝てないわよ。あたしの色気で堕ちなかったわ。そんな男はじめて。
だから気になり始めた。
だけど、何だか認めるのが悔しかった。
「でもキスは上手ね」と、にやりと笑ってやると、玄蛇は軽く肩をすくめて
「妬けるな」と一言、
「やっぱり王子さまのキスは最強か―――」
と、続けた。