。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
*一結Side*
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.。*†*。. 一結Side .。*†*。.
一晩明けて旅行当日の日になった。
昨日は―――眠れなかった。
お酒も睡眠薬も、今はどちらも服用してはいけないからその指示を守っていたわけだけど、
「はぁ……」
手鏡の中に映りこんだあたしが、小さくため息。
今日はホットアイマスクで瞼をケアして、ちょっと厚めにコンシーラーで誤魔化したけど、やっぱちょっと顔色が悪い。
せっかくの響輔と初旅行だってのに…
しかも……
滅多に気にしないケータイの着信を気にしてる自分に嫌気がさす。
今日は、一回だけマネージャーから電話があったけれど無視した。
玄蛇は―――よほどのことが無い限り、掛けてこないだろう。
今日、ここに来る前にコンビニで昨日玄蛇が渡してきた雑誌を探したが、まだ発売前のようだ。テレビでもアイドル様のスキャンダルには触れていない。
バカみたい、何気にしてるのよあたしは。あんな大根女優のアイドル様がどうなろうと関係ないし、転落してくれてラッキーぐらいに思うケド。
でもマネージャーはきっとあたしが写真を撮ってリークしたと―――思ってたに違いない。
だからあたしの……youの自殺騒ぎもアイドル様に苛められて、追い詰められて、と事実を捏造した。
先回りしただけ、マネージャーとして仕事しただけ。
そう割り切れれば良かった。けれど割り切れない―――
はぁ…
再びため息をつき、両腕をハンドルに乗せて突っ伏していると
コンコンっ
パワーウィンドウを軽くノックする
響輔が
ちょっと身を屈めてこちらを覗き込んでいて、あたしは慌てて居住まいを正した。
あたしは窓を開けて、「入って」と短く言うと響輔は言われた通り助手席のドアを開け、シートに腰を下ろす。
ドアを閉めながら
「どないしたん。何か顏色悪いで?」
と、早速指摘されてるし。
「べ、別に!昨日ちょっと夜更かししただけよ!」
と慌てて顔を逸らすと
そっ
響輔の手が伸びてきて、あたしの頬を優しく撫で上げた。
え―――……?
目を開いていると
「熱はあらへんみたいやな」
響輔は至極真面目で
「あ、うん……大丈夫…」と何とか答えた。
響輔はシートに深く背を預けると
「ほんまは行きたない、思うてるんやない?」
と、どうやらあたしの不調が『旅行に行きたくない』と勘違いしている響輔。
「違うし。てか、(響輔と旅行)むしろ行きたいし」
いつもの調子で言ってやると
「ほんま?」
響輔がちょっと微苦笑を浮かべてあたしを見てきて
「うん」
何か……色々悩んでたことがすっ飛んだ気がした。