。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
やめやめ!
あたしは慌てて頭を振り、運転に集中。
「これ、何て言う曲?」
響輔が聞いてきて、「ヴィヴァルディの四季」と短く答えると
「へぇ、これが?てか四季言うても、いっつもどっから春か夏か分からへん」
確かに…最初はあたしもそうだった。初めてこの曲を耳にしたのはあたしが小学校に入ってすぐ。
イヤと言う程、何度も聴いたからいい加減分かるようになった。
「これは冬よ」と答えると「詳しいな」と響輔。
「だってあたし、小学校からモデルやるまでバレエ習ってたもの。クラシック音楽ばっかよ」
「へぇ?バレエ?意外やな……」
響輔は目をぱちぱち。だけどすぐ考えるように首を捻り
「でもそう考えるとちょっと納得。あんたいつも姿勢いいし、あのアイドルの親衛隊をやっつけるキック(俺も手伝ったけど)は結構な威力やったしな」
と、笑う。
それに長年バレエをやってたおかげで脚は誰もが羨む美脚で、それはちょっと自慢でもある。(この脚には約1臆の保険に入ってるしね)
「でも何でやめたん?」とすぐに不思議そうに聞いてきて
「バレエってお金掛かるの。小学校のときバレエ習ってた子が居て、うちで『一結もやりたい』って言ったらママが習わせてくれたの。
女手一つで生活するのもやっとだったのに、あたしがやりたいって言うと全力で応援してくれたし、その分働いた。
長年の苦労がたたって殆ど過労死みたいなものね……」
あたしはことさら何でもないように言った。ママの未来が分かっていたのなら、あたしはその時点でバレエを辞めていただろう。
「ママが死んだのも―――……半分はあたしのせいでもあるの」
それを鴇田のせいにして……ううん、本当はママが死んじゃって本当の意味の孤独を知ったときパパが居てくれたら…って思った。
恨んだ。
憎んだ。
「そんな風に自分を責めるのは止めぇ。あんたのお母さんが亡くなったのは一結のせいやあらへん」
再び響輔の手が伸びてきて、響輔の手の甲があたしの頬をそっと撫でていく。
響輔は―――優しい。
ママと同じ温度、鴇田と同じ空気。
そんな響輔が
好き。