。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
ウッドデッキのテラスに出ると、目の前の海の上を撫でた風が、ふわりと肌を掠めていって、その爽やかな風がちょっと気持ち良かった。
潮の香りが漂ってくる。その風に混ざって、ほんの少し……タバコの匂い…
先輩はテラスの手すりに両腕を乗せて缶ビールと…タバコを吸っていた。
あたしの姿に気づくと
「り、リコちゃん!」と慌ててタバコを消す素振り。
「いいですよ、そのままで」とあたしは苦笑をして「今更だし」と付け加えた。
「そっか…そうだよな!」
と先輩は二三大きく頷き、
「先輩の分のデザート持ってきました」とエクレアを翳すと
「サンキュ~♪」と先輩は笑う。
「みんなと居なくていいんですか?あ、それともタバコ吸いたかったから??」
でも、リビングで龍崎くんも吸ってたような……てことは禁煙じゃないってことだよね。
「いや……ちょっと一人になりたかったから」と先輩は口ごもり
「すみませ……あたし空気読めずに…」慌てて踵を返そうとすると、手首をきゅっと握られた。
「いい!ここに……居て?」
「……はい」小さく頷き、あたしも先輩と同じように手摺に両腕を乗せた。
「風、気持ちいいですね」
「うん、思ったより良かったな、親父の別荘」
「来たことないんですか?」
「小さい頃来たけど、あんま記憶になくてさー」
あはは、と先輩は苦笑い。
その声がどこか空元気を思わせて、先輩の声は風がさらっていったかのように小さく聞こえた。
何を……考えてるのだろう…
知りたいけど、知りたくない―――