。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
*鴇田Side*
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―* 鴇田Side *―
―――「帰る場所を間違えてませんか」
一日の仕事を終え、自分のマンションまで帰ってくると、部屋の扉の前、体育座りをしたパンツスーツの見慣れた女の姿を目に入れ俺は目を細めた。
女が手にしていた大きなビジネスバッグと…スーパーのビニール袋?がアンバランスだ。
最初何と言葉を掛けていいのか分からず、出てきた言葉はどこか間抜けな問いかけだった。
「え……?」
顏を上げた女は、ちょっと目をまばたき、俺と目が合うと慌てて立ち上がった。
「すみませ…」
謝罪の言葉を聞き終えるまでに
「イチなら今日はホテル……じゃなかった…旅行だとか言ってたが」
淡々とした物言いで鍵を取り出し扉まで近づくと、その様子をじっと見ていた女に、俺が怪訝そうに視線を向けると
「あ、あはは!そうでしたね!私ったら間違えちゃって」
と、まるでとってつけたような言葉で慌てて言い、そのふしにスーパーの袋が彼女の手からする抜けて、中が地面にばらまかれる。
「わ!やだっ!」
と慌てて女がしゃがみ込みそれを一つ一つ拾い上げる。俺も手伝う意味で手を伸ばし
“半額割引”と赤いシールが貼られた惣菜のパックの中は、エビフライが入っていた。
「すみませ…」女はまた謝った。
「いえ」俺も深く詮索はせずパックを女に返す。